【カムカム】いよいよ謎が解かれ始める…城田優は単なるナレーターではなかった?

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 大人気作となったNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」も残すところあと1カ月余。今後、謎が次々と解かれ、打たれてきた布石の理由が分かる。その役割を担う中心人物は城田優(36)が担当する語りの人物にほかならない。

 あらかじめお断りしておきたい。先入観を持たずに今後の物語をご覧になりたい方はお読みにならないでほしい。

 城田が担当している語りの人物は何者なのか。この男の「正体」が物語の全体像を見通すカギだ。

 この男は現代を生きる人物であり、過去にあったことの全てを把握した上で、安子(上白石萌音、24)の生まれた1925年に始まる物語を進行させている。まさにストーリーテラーである。

 ずっと不思議な存在だった。この物語には第1話から登場し続けている人物が1人として存在せず、ヒロインが安子、るい(深津絵里、49)、ひなた(川栄李奈、27)と変遷したが、語りの男は3人に寄り添い続けている。

 3人の心の奥底まで代弁しているから単なるナレーターでないようだが、立場が一向に分からない。

「稔(松村北斗、26)の戦死の報せから半年が過ぎました。安子は涙が涸れ果てるまで泣き暮らしました」(第21話、語り)

「るいはクリーニングの仕事が好きでした。シャツの汚れが落ちるたび、自分の背負ってきたもの、過去のしがらみや悲しみが消えてなくなっていくような気がしました」(第41話、同)

「いつになったら自分の道を見つけられるのか。18歳のひなたには深刻な問題でした」(第74話、同)

 前作「おかえりモネ」の語りを担当した竹下景子(68)は主人公・モネ(清原果耶、20)の祖母・雅代だった。前々作「おちょやん」の語りは黒衣(桂吉弥、51)で第1話から自らの立場を明らかにした。その前の2020年度前期作品「エール」の語り・津田健次郎(50)は歌手の佐藤久志(山崎育三郎、36)のマージャン仲間だった。

男の正体は…

 今回の語りの男はビリー(幼少期は幸本澄樹、9)だろう。第66話でひなたが条映映画村で出会い、心ときめかせ、ラジオ英語講座を聴き始めるきっかけとなった少年である。第69話で米国に帰った。

 ビリーは何者なのか。安子、るい、ひなたの歩みを語っているのだから、3人のうち誰かと近い人物と読み解ける。安子がロバート・ローズウッド(村雨辰剛)との間にもうけた子供に違いない。るいの異父弟である。

 ビリーという名前に「正体」のヒントがあった。

 るいの名前の由来となったのが「ジャズの父」と呼ばれるルイ・アームストロング(1901~1971年)なのは知られている通り。一方、ジャズ史上最高の女性ボーカリストと称されているのはビリー・ホリデイ(1915~1959年)である。ビリーは彼女の名前から命名されたのだろう。るいは性別を問わず付けられる名前だが、ビリーもそうだ。

 ルイ・アームストロングとビリー・ホリデイはともにモダンジャズの始祖と讃えられ、「マイ・スウィート・ハンク・オ・トラッシュ」というデュエットも残した。映画「ニューオリンズ」(1947年)で共演もしている。

 なにより、1934年にルイがレコーディングし爆発的にヒットした「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート(ひなたの道を)」はビリーも1944年にカバー。同じく大ヒットさせた。やはり、この曲が物語に深く関わり、大きな意味を持っていた。

 安子がどんな思いでビリーと命名したのか詳細は分からないものの、片時もるいを忘れなかった表れであるのは確かだろう。渡米後の安子のるいへの思いや暮らしぶりはビリーの口から語られるのではないか。

 第68話にもヒントはあった。まだ11歳だったひなたの親友・小夜子(幼少期・竹野谷咲、10)が、ビリーを回転焼き屋「大月」に連れてきた。小夜子とひなた、ビリーは第66話で知り合った。ビリーが映画村でキーホルダーを落とし、それをひなたが拾ったことが端緒だった。

 小夜子が「大月」にビリーを連れてきた理由はこうだった。

「おいしい和菓子が食べてみたいんやって」(小夜子)

 和菓子というものを知っている上、それを欲する米国の少年はごく少数のはず。母・安子を通じ、和菓子の存在を知っていたからだろう。

 脚本を書いている藤本有紀さん(54)はどの作品でも後出しジャンケンのようなことはせず、フェア。ヒントとしての布石が置いてある。

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