「鎌倉殿の13人」にも起用…三浦透子は他の女優とどこが違うのか

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作品によって変わる印象

 現在は「カムカムエヴリバディ」に出演中。茶道の師匠のベリーこと野田一子(市川実日子)の一人娘・一恵役を演じている。あだ名は「いっちゃん」。3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)とは幼なじみで、高校の同級生だった。

 初登場した第71話は1982年で、高2という設定だった。るい(深津絵里)とひなたを相手に着物姿でお茶を点てた。お茶会用の練習だった。

 るいから「上手になったね、いっちゃん」と賞められると、「ありがとう、おばちゃん」と素直に喜ぶ。近しい人と話す口調で、あどけなさが出ていた。

 だが、師匠である一子の採点は「なーにがー。まだまだえ」と辛かった。一子が続けて「けどまぁ、次のお茶会でお手前するのは、これで合格としとこか」とギリギリ認めると、一恵は畳に手を付き、「ありがとうございます」と礼を言った。

 この時の三浦の演技が細かかった。礼を言う前、ほんの一瞬、一子を睨んだ。厳しいことを言われたことへの反発にほかならない。この時点で一恵が気丈な女性であることが観る側に伝えられた。

 この直後も演技巧者ぶりを見せた。るいから「いっちゃんは卒業したら、そのままお茶の道に進むん?」と問われると、一恵は「ううん、短大受ける」と即答。それを聞かされてなかった一子が気色ばみ、「なんで?」と問い詰めると、「なんでって別にええやない」と素っ気なく答えた。

 一恵はほんの僅かの間に、一子の立場を「師匠」から「母親」に一方的に切り替えたのだが、観る側に違和感を全くおぼえさせなかった。三浦がうまいからだ。

 三浦の印象は作品によってかなり違う。どの作品でも役柄を自分に引き寄せることに成功しているためである。

 2020年の映画「ロマンスドール」では、蒼井優(36)と結婚しているという設定の高橋一生(41)と一夜を供にするOLを演じた。ごく普通の女性に見えるが、自分から高橋を誘い、別れ際には自ら2度と会わないと告げる。この役柄もリアルだった。

 池松壮亮(31)が主演したテレビ東京の深夜ドラマ「宮本から君へ」(2018年)にも出演。池松が演じるサラリーマン・宮本と親しくなるOL・茂垣裕奈を演じた。

 裕奈は小学生の時にいじめに遭い、それがトラウマになっている女性だった。この作品でも三浦は裕奈に成りきっていた。やはり身近にいそうな女性に映った。

「憑依型女優」とか「カメレオン俳優」という表現を嫌がる役者がいる。ほかの職業と同じく、才能と技術、努力でさまざまな役を演じているからである。三浦もオカルト的な力で演技をしているわけではない。早くから才能を認められていた上、努力を重ねてきた。

 三浦は今後の飛躍が確実視されている。国内にとどまらず、海外でも活躍するのではないか。「ドライブ・マイ・カー」の評価は欧米で極めて高いので、キーパーソンを演じた三浦にオファーが来る可能性は高い。

※1 「Hint-Pot」2021年8月26日付

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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