「鎌倉殿の13人」にも起用…三浦透子は他の女優とどこが違うのか

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女優以外の世界を知らなくては

 三浦とほかの若い国内女優との差異はまだある。三浦は良い意味で女優臭が薄い。大抵の女優には華やかさなどの特別感があり、それが売り物の1つである一方、これが邪魔になって演じる役柄が現実離れしてしまうことがある。だが、三浦が演じる人物はいずれも十分過ぎるほどリアリティがある。文字通り等身大。まるで隣人だ。

 三浦は1996年10月、札幌市で生まれた。芸能界入りは2002年4月。約3000人の中から選ばれ、サントリーの清涼飲料水「なっちゃん」のCMに登場する2代目なっちゃんに選ばれた。初代の田中麗奈(41)の後を受けた。同市内の幼稚園に通う5歳の時だった。

 選ばれた理由はかわいらしくて、元気が良く、カメラの前で全く物怖じしなかったため。当時から大物の片鱗も見せた。審査員から「何か歌って」と要求されたものの、気分が乗らなかったらしく、「嫌です」と拒んだ。

 半年後の同10月には松本幸四郎(現・松本白鸚)が主演したフジテレビ「天才柳沢教授の生活」でドラマデビュー。松本が扮した柳沢教授の孫娘・華子に扮した。この作品でもかわいらしいと評判になり、元気も良かった。三つ編みで、おじいちゃんが大好きな少女だった。

 小学校卒業と同時に上京。2011年、14歳の時に出演したのが「鈴木先生」(テレビ東京)だった。中2を受け持つ教師・鈴木(長谷川博己)とその生徒たちの姿を活写した野心作で、三浦は生徒の1人の樺山あきらに扮した。このころには子役から脱皮し、現在の三浦に近づきつつあった。

 あきらはクラス全員が「マズイ」と文句を言う給食の酢豚が大好き。残った分まで立ったまま豪快に食べた。みんなクビを傾げた。評判があまりに悪いので、酢豚が給食のメニューから外される直前、あきらが好んで食べる理由がようやく分かる。死んだおばあちゃんの味に似ていたからだ。

 あきらは鈴木に対し「なんで、みんな嫌いなんだろう。そんなにマズイかな」と静かに訴える。物悲しそうだった。酢豚を立ち食いした時とは表情が一変。その変化に不自然さを感じさせなかった。もともと演じる才能に恵まれていた。

 5歳でデビューしながら、なぜ女優臭が薄いのかというと、それは本人が意識的にそういう生き方をしてきたから。早くから女優を一生の仕事にしていくことを決心したからこそ、多くの芸能人が歩みがちな道を選ばなかった。

「この仕事が当たり前である人生を歩んできてしまったので、そうじゃない世界を知りたかったんです。いや、知る時間を作らなくちゃと思ったというか。だから高校も一般の高校でしたし、大学にも行こうと思いました」(※1)

 2019年に卒業した大学では数学を専攻。プログラミングなどを学んだ。女優という職業を持ちながら、進級も卒業も簡単ではない数学を専攻するのは異例と言える。しかも在学中は家庭教師のアルバイトもやっていた。

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