人知れず500万人が苦悩する「便もれ」改善方法 深刻な病気の兆候という可能性も
家康も苦しめられたIBSとは?
ストレスなどが原因で下痢になる過敏性腸症候群=IBSとは、どんな状態をいうのだろう。
「試験、大切な会議、初めてのデート、満員電車など、ストレスにより不安な状態になると下痢をしたり、腹痛を起こしたり、ときには便秘にもなります。消化管の調整が整わない状態になるのがIBSです」
という石井さんのクリニックにも多くの患者が訪れるそうだ。女性の方が多い疾患で、長いことよくならない便秘の原因として見つかることもある。また、下痢と便秘に、交互に苦しめられる人もいる。
「私たちの体内には、セロトニンという、精神を安定させる脳内の神経伝達物質があります。ストレスがかかると、このセロトニンが腸から出過ぎて、腸が収縮し、下痢になります。あるいは、収縮が強くなり過ぎると、動かないような状態になり、消化物をうまく先へ送れず、便秘になりお腹が張ります」
IBSは昔からあった。戦国時代の1572年、織田信長と徳川家康の連合軍が武田信玄と戦った、三方ヶ原の戦い。この戦で織田・徳川軍は徹底的にやられ、家康は恐怖で脱糞しながら馬を駆って、浜松城へ逃げ帰ったと伝えられている。このときの家康もおそらくIBSだったのだろう。
身体と心、両方からアプローチ
現代では、高速道路に乗ったり、渋滞にはまったり、観覧車に乗ったり、トイレに行けない状況になると、心配で便意を催す人も多い。これもIBSだ。
石井さんによると、IBSの治療には、身体からと心から、両方のアプローチがあるそうだ。
「まずは下痢や急な便意を抑えなくてはなりません。消化器内科では、ラモセトロンという腸へのセロトニンの効果を減少させる薬や、ポリカルボフィルカルシウムという便をゲル化して便の輸送を調整してくれる薬をまずは使用することが多いです。そして、必要に応じて、認知行動療法を行います」
認知行動療法とは、カウンセリングを重ねてストレスを緩和させ、起きている問題を解決する治療だ。
「会議や満員電車と便意は直接的には無関係で、背景にあるストレスが自動的に湧き起こってしまっている状態であることをカウンセリングによって認識してもらいます。つまりものの受けとめ方、“認知”を変えるわけです。まずは消化器内科で診察を受けて、一般的な治療では改善がなく認知行動療法が必要な場合に、心療内科や精神科で認知行動療法を実践している先生に相談してみてください」
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