人知れず500万人が苦悩する「便もれ」改善方法 深刻な病気の兆候という可能性も

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人工肛門の生活

 毎朝のあの駅の光景を見ると、500万人は氷山の一角ではないだろうか。もっと多くの人がお漏らししているはずだ。衛生用品メーカー、ユニ・チャームが、20歳から79歳までの男女2万人を調査したところによると、5人に1人が「ちょいもれ便」をしている(2017年)。

 石井さんは東京・目黒区の診療所を拠点に在宅医療に携わっている。そしてお漏らしについて、実は筆者より切実な体験がある。10代で潰瘍性大腸炎を発症。手術で大腸をほぼ取り除き、人工肛門の生活を体験した。

「通学の駅全部で、排泄のために下車したこともあります。何度か失敗もして、やがて登校するのも嫌になりました」

 その後、わずかに残った腸と肛門をつなぐ手術で排泄機能は取り戻したが、今も1日に5回排泄する生活を送っている。そして、大腸がんの早期発見、早期治療を目指す「日本うんこ学会」を2013年に設立した。

 うんちのお漏らしには、石井さんや筆者のようになにかしらの病気が原因のこともあれば、食生活が原因のこともある。さらに「IBS(過敏性腸症候群)」という強いストレスなどで下痢や頻便になるケースも多い。

まずは医師に相談

 石井さんの体験した潰瘍性大腸炎は、大腸内の粘膜に慢性的な炎症が生じ、びらんや潰瘍ができる病気だ。原因不明の難病で、腹痛、下痢、血便、発熱などの症状に苦しむ。よく知られるところでは、安倍晋三元首相がこの病気を理由に第1次政権時に辞職した。第2次政権下でも症状が悪化。退陣に追い込まれた。

「頻繁に漏らしてしまうのは、その奥に深刻な病気があるからかもしれません。潰瘍性大腸炎のほかにも、糖尿病、脳血管障害、認知症などが便漏れのリスクになるといわれています。なにが原因で漏らすのかは人それぞれなので、まずは病気が隠れていないか消化器内科で相談してみてください」

 そう石井さんも警告する。他にも体質が原因で漏らす人もいるそうだ。

「たとえば、乳糖不耐症。牛乳などに入っている乳糖を分解できずに下痢をしてしまいます」

 乳糖を分解するラクターゼという酵素が足りなかったり、働きが弱まったりするのが原因とされている。

「乳糖不耐症は子どもに多く、酵素を補充する治療をすることもあります。先天的な場合だけでなく、加齢に伴い酵素が減るといわれていて、大人になってから下痢をする人もいます。疑われる場合は、まず乳製品を避けて排便の状況を観察してみてください」

 他にも食物のアレルギーで下痢をすることもあるという。下痢の原因を知るには、アレルギー検査など複合的に診察をする必要があり、やはりまずは受診をすることが望ましい。

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