“犬の口輪”をはめて国会へ… ルーマニアの超過激「反ワクチン」議員の正体
ミスター・プレジデントからのメッセージ
ソソアカ氏の言動は、誰かを彷彿とさせないだろうか。そう、米国の前大統領、ドナルド・トランプ氏だ。彼女に最も影響を与えていると言われるのが、まさにそのトランプ氏。彼の弾劾裁判の際には、ソソアカ氏はトランプ氏を全面的に支持していた。トランプ氏の演説の常套句、「Truth will prevail(真実が最終的に勝つだろう)」を、彼女も好んで使用している。
2021年2月に所属していたルーマニア統一連合(AUR)から退会命令が出た時には、トランプ氏からTwitterを介して〈ソソアカ氏の党からの除名を読んだ。悲しい。これは大いなる過ちである〉というメッセージが送られてきたことを自慢げにネット公開。これにソソアカ氏は〈Thank you! Mr. President!(ありがとう! 大統領様!)〉と返信している。このやりとりを明かしたソソアカ氏のツイートには、〈二人の偉大なる殉教者を出してしまったことが悔やまれる〉という支持の声がある一方、ソソアカ氏の“自作自演”を疑う声もあり、〈トランプのTwitterはとっくに閉鎖されている(※当時)から、メッセージ送信は嘘でしょう。チャウシェスク独裁者やプーチン大統領からのメッセージも作ってもらえば〉とのコメントも送られている。
インタビューにキレて記者を監禁
極めつけのソソアカ氏の奇行は、昨年12月10日起きたイタリア人ジャーナリストの監禁事件だろう。
それはイタリアの公共放送RAIの女性記者と取材陣が、ソソアカ氏の弁護士事務所でインタビュー行っている時に起きた。報道によると、記者がルーマニアのコロナ感染による記録的な死亡者数やワクチン接種を遅らせる原因であるソーシャルメディアの誤った情報について触れたところ、ソソアカ氏との関係が悪化したという。
真相はどうなのか。今回、事件現場に居合わせた通訳の女性、デリア・マリネスク(30)さんに電話で話をきくことができた。
「事務所でのインタビューをソソアカ議員は大変歓迎してくれました。お菓子やお茶などが用意され、議員の夫も同席のもと、最初は和やかな雰囲気でした。ところがインタビューが始まると、ソソアカ議員は突然、黒い大きな袋を取り出してきて、『敬虔なキリスト教徒がこの袋に詰め込まれている。コロナでもない偽りによって、キリスト教徒が宗教的葬儀を行わないまま殺されていくのは痛まれない』と捲し立てたんです。『コロナウィルスは存在しません』と強調する議員に、イタリアの記者は『私の国の現状も尊重してください。大勢がコロナで死亡しています』と反論しました。続けて、ソーシャルメディアの誤報やパンデミック対策の不備などを問い詰めると、議員は形相を変えました」
そして事件が起きた。
「それまでソソアカ議員は英語で取材に応えていましたが、『ルーマニア語が私の母国語だから、私の言葉で話したい』と急に私に通訳を要求し始めたのです。しかも『英語は私も理解できるから、変な通訳をしないように。見張っているからね。条件を飲めないなら取材はお断りだよ』と私を威喝しました。それに対してイタリアの記者は『条件は飲めません。取材はこれで結構です』と立ち去ろうとしました。その瞬間、議員は『あんたたち、一体何者なの? ジャーナリストではないはずだ。どこかの政府の工作員に違いない!』と叫び始めたんです」
ソソアカ氏は事務所のドアに鍵をかけ、取材班を閉じ込めたという。そのうえで「泥棒が事務所内に入った」と携帯電話で警察に通報した。
「事務所に顧客が入ってきた隙を狙って、女性記者だけがなんとか外に脱出しました。私とカメラマン、プロデューサらが啞然としている間、記者はスマートフォンで建物の外から監禁状況を撮影していました。すると議員の夫が現れ、記者のマスクを無理やり取り外し始めたんです。顔を殴ろうとする様子も見えました。4~5人の警察官が事務所に到着し、議員の夫を止めにかかろうとしましたが、結局、議員の夫はその場で逮捕となりました」
取材班らは、警察署で8時間も拘束される憂き目にもあった。最終的には、在ルーマニアのイタリア大使館が介入し、解放されるにいたった。欧州ジャーナリスト連盟(EFJ)は、取材班への襲撃およびルーマニア警察によるジャーナリストの不当逮捕を非難している。
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