国連に非加盟で台湾の有事はより深刻… それでもウクライナとは絶対的に違う点がある
歴史の転換点であるとたちどころに認識できる瞬間は、それぞれの人生の中でも数えるほどしかないだろう。だがいままさに我々は、明確なまでに世界の歴史の分岐点に立っている。それぞれの国家が、歴史の曲がり角においてどのような行動をとるのか。後世の歴史家による審判を仰ぐこととなる。【村上政俊/皇學館大学准教授】
ウクライナは日本にとって、遥かかなたの国ではない。ロシアを挟んで隣国の隣国という関係にあるウクライナに対して、侵略戦争が仕掛けられたのであり、対岸の火事などでは決してない。ウラジーミル・プーチンが特殊軍事作戦と称したものは、限定的な紛争などではなく、核保有国が大規模戦力を投入して遂行する正真正銘の戦争だ。
ロシアによる今般の軍事行動は、国際法の観点からはいかなる形でも正当化することはできない。岸田文雄内閣が表明している侵略という認識は、歴史の評価に十分に耐え得るものだ。
我が国自身も、第二次世界大戦末期にソ連によって多くの同胞が連れ去られ、シベリアに抑留された。侵略された北方領土は、いまだロシアによって不法占拠されたままだ。ゼレンスキー大統領とウクライナの人々が味わっている痛みについて、我々は自らの苦難の歴史を思い起こしながら、理解し寄り添うことができるといえよう。
もはや北方領土交渉を進める土台は、ロシア自身によって破壊されたのであり、いまはロシアへの配慮など捨て去る時だ。欧米と足並みを揃える形で、ロシアに対する経済制裁を実施するという日本政府の判断は、きわめて妥当である。
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