「建設業界は3K」はもう古い? ロボットがSFのように活躍? フジタが明かすDXの現在と未来

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 建設業界といえば「3K(きつい、危険、汚い)」というイメージを持つ方も多いのではないだろうか。しかし、DX(=デジタル技術を用いたビジネスモデルの変革)の推進により、いま建設業界の働き方は大きな変化の時を迎えているという。今回、DXが可能にする「未来の建設業」について、総合建設会社である株式会社フジタに取材した。

コロナ禍で働き方に大きな変化が

「正直に言えば、これまで建設業界はデジタル技術を導入してきたものの、企業文化を根本から変えるようなDX化が進んできたとは言い難い状況でした。しかし、コロナ禍によって従来の働き方が見直され、非接触で業務を行う必要性も増したことで、弊社でも飛躍的にDXを推進することになりました」

 こう語るのは、株式会社フジタの平原孝良執行役員。現場作業には人間の力が不可欠であり、一見DXからは遠いように見える建設業界だが、具体的にはどのような変化が起こっているのだろうか。

「コロナ禍による大きな変化として、必ずしも作業場所に行く必要がなくなった、ということがあげられます。従来、施工の進捗を確認する際は、従業員が作業場所に行って目で逐一確認するのが一般的でした。しかし、最近では高画質の映像をビデオチャットアプリを使ってシェアすることができ、リアルタイムで現場の状況を確認することができます。また、この映像は設計事務所やクライアントなど社員以外の方もアクセスできるため、『見られている』といういい意味での緊張感が現場で生まれるようになっています」(同)

ロボットが現場を歩き回る?

 建設現場で使われる重機などのハード面でも大きな変化が。元々フジタでは、30年以上前から危険が伴う建設現場での無人施工を行うために、遠隔操縦装置を自社で開発してきた歴史がある。

「現在はこの技術をさらに突き詰めて、遠隔操縦を行う必要すらない無人AI重機の導入を進めています。AIが建設現場の土の硬さなどさまざまなデータを蓄積、学習することで、熟練したオペレーターのような仕事がこなせるようになってきているんです。そのほか、以前は人力で行ってきた測量も、現在はドローンを使用することで効率化しており、山間部など作業が難しかった場所で力を発揮しています」(同)

 これらの技術に加え、今後ますます大胆な「革命」も起ころうとしている。ロボットが工事現場内を動き回って仕事をするという、まるでSFのような未来がすぐそこまで来ているというのだ。

「Spotという犬型の四足歩行ロボットの導入を予定しています。Spotは段差の乗り越えや不整地での歩行が可能で、危険性が高い場所にも入っていくことができます。現在、360°カメラを搭載したSpotを夜間など人がいない時間に巡回させて、進捗に問題がないか、設計図とのズレがないか、などを確認する実証実験中です。またAGV(=Automated Guided Vehicles)と呼ばれる無人配送車を活用して、夜間に翌日使用する資材を準備したり、場内の清掃を行ったりすることで、人間がいない時間帯を効率的に利用することも視野に入れております」(同)

「脱3K」を目指して

 こうした最新技術の導入は、単に業務を効率化することのみならず、業界が抱える問題の改善にも役立つのだそうだ。

「今後、危険な作業はますます機械に取って代わられ、作業の効率化によって労働時間も減少していくでしょう。つまり、『脱3K』です。建設業界では作業員の高齢化が進み労働力不足が問題となる一方、2024年には時間外労働の上限規制が適用されるため、働き方の改善が強く求められています。先に挙げた無人AI重機が普及すれば、熟練した職人の代わりを果たしてくれますし、夜間の有効活用が進めば、日中の作業も効率化してくれるため、時間外労働の削減も可能になるでしょう」(同)

 建設業界のDX推進は、われわれ生活者の暮らしにも直結するのだという。

「設計図も従来の2Dから3Dになると、お客様も早い段階で完成後の建物の姿をイメージしやすくなり、また、DXによる見える化や効率化で質の高い建築物をより安価で提供することが可能になります。こうした変化は、業界のみならず社会全体にもプラスをもたらすのではないでしょうか」

アイデアコンペでは賞金も

 大きな曲がり角を迎える建設業界。このような時代にフジタが求める人材は「常にチャレンジできる人」と前原克充人事部長は語る。

「フジタでは若いうちからチャレンジすることが求められます。近年は海外事業を積極的に展開しており、希望をすれば若いうちから海外勤務を経験することができます。中には30歳で所長を務める社員も。日本とは異なる文化、環境の中で現地のスタッフを率いていくことで、若くして成長できるチャンスがあります。海外志向の強い人、裁量権の大きい環境で成長したい人にとっては、これ以上にない環境だと思います」

 こう語る前原人事部長も昨年3月まで海外赴任しており、多い時には年間100回ほど飛行機に乗って国内外を飛び回る生活をしていたという。また、入社8年目で建築工事部で現場の管理を行う原田大輔さんも「現場の『工事長』として100人規模の現場を任せていただいています」と若いうちから大きな仕事を任せられることにやりがいを感じているのだそうだ。さらに、一人ひとりの社員のアイデアが会社を動かすこともフジタの特徴なのだと明かす。

「2016年から『破壊的イノベーション』と題して、全社員が参加可能なアイデアコンペを開催しています。最優秀者には賞金が支払われ、実用化に向けた技術開発も並行して行っています。毎回千件以上の応募があり、すでに実用化されたアイデアも数多くあります。若手でもベテランでも関係なく、社員の『こういうものを作りたい』という気持ちをすくい上げ、かつ実用化までもっていくことのできる技術は弊社の強みといえるかもしれません」(平原執行役員)

女性社員の割合が増加

 誰もがチャレンジし、積極的にアイデアを出せる企業風土を実現するために、ダイバーシティ(人材の多様性)推進に取り組んでいるフジタ。近年は特に女性の採用に力を入れているという。

「これまで建設業界といえば男社会というイメージがあったと思います。しかし、近年は積極的に女性を採用しており、20%強が女性になっていますし、今後ますます女性の割合は増加していくでしょう。また、女性総合職ネットワーク『F-net』を2007年に立ち上げ、女性総合職が連携して、個々の能力を高める活動を行いつつ、ライフワークバランス(仕事と生活の調和)も保つことのできる仕事環境の整備を進めています。さらにダイバーシティ推進部という部署もあり、結婚、出産を経た女性が働きやすく、かつ男性でも育休を取りやすい環境づくりを進めています」(前原人事部長)

 採用ページのキャッチコピーを「人を築くフジタ」としている通り、「教育制度も充実しています」と胸を張る前原人事部長。

「建築という仕事では、毎回異なる土地、気候の中で、さまざまなトラブルに臨機応変に対応することが求められます。このため、学校では学ぶことのできない、より高度で実践的な技術を習得する『フジタ建設大学』という教育システムを導入しています。ベテラン社員による講義を受講する中で、長年蓄積された『現場の知恵』をスピーディーに会得することができるのです」

DXが進んでも変わらないもの

 DX推進で大きく変わりゆくフジタだが、一方で変わらないものもあるという。

「どれだけ技術が進歩しても、結局建物や街を作るのは人間です。ですから、ものづくりが大好きで『建物や街づくりを通して人の生活を豊かにしたい』という思いが強い人が活躍できる業界であることに変わりはありません。理系のイメージが強いかもしれませんが、文系であっても営業や管理、経理などの業務で『ものづくり』に携わることになります。街づくりに携わりたい、と弊社を志望する文系卒の学生も多いんですよ」(前原人事部長)

 この言葉通り、現場で働く若手社員に「やりがいを感じる瞬間」を聞くと、ものづくりに誇りを持って働く姿が見えてくるのだ。

「入社して最初に携わったある企業の社員寮には特に思い入れが強く、休みの日に妻、子どもと一緒に見に行きました」(前出の原田さん)

「先日、自分が担当した幼稚園の現場が竣工したのですが、園長先生から『皆さんのおかげでいい建物ができました』と労いの言葉をかけられて……。大変な現場であっても、お客さまにこう言っていただけることが活力になるんです」(入社9年目で建築工事部に所属する金井一馬さん)

 魅力ある建物・街づくりに心を込める人間と、それを支えるデジタル技術と組織文化の変革――。取材を通して見えてきたのは、建設業界におけるDXの明るい未来図だった。

株式会社フジタ
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