介護大手「ニチイ学館」のMBO成立で問題視された「創業一族ファースト」のマネーゲーム
少数株主への裏切り
だが、この利己主義的なMBOに香港のファンド「リム・アドバイザーズ・リミテッド」が異を唱える。6月、リムは、5%未満の少数株主としてMBOの公正性を問う質問状をニチイ学館に送付。適正なTOB価格は2400円とし、なおかつ、経産省が少数株主の保護を定めた「公正なM&Aの在り方に関する指針」にも抵触すると批判したのだ。
ニチイ学館の経営陣はリムの異議を黙殺。一方で、株価は、リムが適正価格を2400円と提示したためか、TOB価格を常に上回り続ける。3回にわたって期間延長され、TOB価格も1670円に引き上げざるを得なかった。
結果として、創業一族は莫大な売却益を手にすることになった。しかし、より高値での株売却の機会を奪ったことは、少数株主への裏切りに値する行為に他ならない。「創業一族ファースト」のマネーゲームが、MBOの問題点を浮き彫りにした格好である。
「週刊新潮」2020年9月17日号「MONEY」欄の有料版では、ニチイ学館のMBOの経緯と問題点を詳報する。
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