「第6波の死者はコロナでなく細菌性肺炎が原因」 専門家が指摘、予防法は?
喫煙と肥満も危険因子
ここまで述べてきたのは、主に介護が必要な高齢者や、基礎疾患を抱える人が対象の話だが、若い世代でも喫煙者と肥満体質の人は気を付けなければならない、と寺本教授は指摘する。
「まずは喫煙。喫煙習慣によって、ACE2というコロナウイルスの受容体が増えるからです。ワクチンを打てばスパイクタンパク質に対する抗体が作られ、ウイルスと受容体が結合しにくくなるので、細胞内に入り込むリスクが減る。しかし、ワクチンを打ってもすべてのウイルスの侵入を阻止できるわけではありません。受容体が増えれば、細胞内に入り込もうとするウイルスの総数が増え、相対的にワクチンの効果は落ちます。そのうえ喫煙は喉を傷つけ、オミクロン株が増殖しやすい状態を作ります。二重の意味でよくありません。喫煙習慣があると、若い世代でも重症化につながり、細菌性肺炎にかぎらず、さまざまな合併症を引き起こしたり、場合によっては、ウイルス性肺炎にまで至ったりするリスクが高まってしまうでしょう」
続いて肥満体質だが、
「肥満者の肥満細胞は、普通の細胞にくらべてサイトカインを放出しやすく、コロナウイルスに感染すると、それが大量に放出されてしまいます。したがって、肥満体質の人がコロナに感染すると、免疫システムが暴走し、身体中が高熱を帯びて炎症を起こし、多臓器の状態が悪化するリスクが高まります。これがサイトカインストームで、最悪の場合、身体中のあちこちに血栓ができ、血管が詰まってしまう播種性血管内凝固症候群を患って、死に至るリスクもあるでしょう」
だから寺本教授は、肥満体質の人に呼びかける。
「ダイエットはもちろんのこと、糖尿病や高血圧、脂質異常症など基本的な生活習慣病の治療と管理を、改めて見直したほうがいい」
コロナ禍の出口は近い?
このように、オミクロン株にもリスクは多方面に存在する。だが、数ある病気のなかで新型コロナウイルス感染症は、もはや特別なものではなかろう。
たとえば、コロナ禍を迎える以前、季節性インフルエンザで亡くなる人は、国内で年間1万人を超えるといわれていた。風邪をこじらせて細菌性肺炎を発症して亡くなる人も、年間1万人規模だったという。
オミクロン株は「普通の風邪になった」という声もすでに紹介したが、要するに、風邪やインフルエンザと同様、オミクロン株にもリスクがあるから気を付ける、ということだろう。
事実、高齢者や基礎疾患がある人の3回目のワクチン接種が進み、よく効く飲み薬が複数揃えば、コロナ禍の出口は一気に近づくはずである。浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師が解説する。
「特例承認されたファイザーのパキロビッドは、効果が実証されており、期待しています。この薬に含まれる抗ウイルス薬のニルマトレルビルが、ウイルスの増殖に必要な酵素3CLプロテアーゼの作用を阻害する仕組みです。臨床実験では、重症化率を89%下げたという結果が出ています。ただ、一つだけ問題があって、抗ウイルス薬が肝臓で分解されるのを抑制しその血中濃度を上げるために、リトナビルという薬と一緒に飲むのですが、高血圧などほかの薬にも同じ効果を発揮するため、一緒に飲めない薬が結構あります。たとえば不整脈の薬を飲んでいる人は、飲むのをやめたら死んでしまうので、パキロビッドは使えません。薬が必要な基礎疾患がある高齢者が飲みにくいのです」
シオノギの新薬
その穴を埋めると期待されているのがシオノギの新薬で、間もなく承認申請されるといわれている。
「こちらもファイザーと同じ仕組みですがリトナビルは使いません。日本の会社なので日本に優先供給してくれるはずで、その点でも期待度が高いです。まだ治験の結果が出揃っていませんが、効能があればインフルエンザに対するタミフルのような存在になる。そうすれば、コロナがインフルのような存在になると言って間違いありません」(同)
新型コロナがインフルエンザや風邪と大差なくなるまで、あと1カ月か、2カ月か。しかし、もう一息のところで隙を作って命が危険にさらされたら、もったいない。その小さな努力は、ウィズ・コロナ時代の日常的リスクに対しても、有効なはずである。
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