「第6波の死者はコロナでなく細菌性肺炎が原因」 専門家が指摘、予防法は?
口腔ケアが重要
国際医療福祉大学教授で、山王病院呼吸器センター内科副部長の須藤英一医師も、
「誤嚥性肺炎の予防について、あらためて意識するのは悪いことではない」
と、こう話す。
「特に気をつけたほうがいいのは要介護度が高く、普段の活動量が落ちている方です。オミクロン株に感染して全身の体力がさらに落ち、嚥下反射機能の低下を引き起こしやすいからです。高齢者でなくても高血圧や心疾患、糖尿病、肺気腫などの慢性的な持病、すなわち基礎疾患を抱えている方も気をつける必要があります。基礎疾患のために白血球中のNK細胞やT細胞の働きが鈍り、ウイルスや菌への免疫力が下がってしまうともいわれています。また、基礎疾患の多くは血管の老化につながります。血管が弾力を失い、血液もドロドロになっていれば、血栓が詰まりやすい。するとオミクロン株に感染して高熱が続き、脱水症状に陥れば、血栓が詰まって脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるのはもちろん、痰をうまく吐き出せないなど、誤嚥の原因にもなります」
要は、要介護度が高い高齢者や基礎疾患を抱える人は、オミクロン株に感染すると、いろんなリスクを引き寄せてしまう、ということだ。では、それをどう予防するか。須藤医師は、
「3回目のワクチン接種です。感染しても症状が軽く済む。つまり免疫力を上げることができます」
と、まず提案。続けて誤嚥性肺炎の予防策について、次のように述べる。
「一つは口腔ケアです。普段の歯磨きをしっかり行えば、悪玉菌の割合を減らせるうえに、口内が刺激されて神経伝達物質が分泌され、嚥下反射や咳反射の能力が向上します。施設に入って活動量が落ちている高齢者の場合、介護をしてくださる方に口腔マッサージを頼むのもいい。常在菌が増殖しないように、歯科医で歯周病の治療を受けておくこともお勧めです。次に、肺炎球菌ワクチンの接種という手もあります。そもそもこのワクチンは、65歳以上が接種対象。高齢で普段の活動量が落ちていたり、基礎疾患を抱えていたりするなら、接種はよい選択肢だと思います。コロナワクチンの接種後、13日間空ければ、一般の病院やクリニックで打つことができます」
ストレッチも効果的
基礎疾患がある人のリスクについて、誤嚥性肺炎にかぎらず、さらに深めておきたい。當瀬教授が言う。
「たとえば、肺の病気ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。これは主に喫煙によって、肺胞が壊され、血液に酸素を運ぶ能力が衰えてしまっている状態です。この持病を抱えている方が、オミクロン株に感染して重い症状を患えば、高熱や咳が続き、ただでさえギリギリだった酸素の供給能力が失われてしまう。結果として、身体中の酸素濃度が下がり、危篤状態に陥るリスクが出てくるでしょう」
心臓や血管系の持病を抱えている人も、リスクが高いという。
「たとえば、慢性的な心不全を抱え、すぐに息が切れてしまうような方。感染して脱水症状が続くと、血液の量が減っていくので、ただでさえ血の巡りがよくないところに、身体中に十分な血液が回らなくなり、やはり危篤状態に陥るリスクが出てきます」
対策としては、
「特に高齢者を中心に、3回目のワクチン接種を急ぐこと。リスクが高い高齢者の免疫力を上げることが必要だといえます」
と、當瀬教授。そこに須藤医師が加えて言う。
「基礎疾患を抱えている方には、特にストレッチ体操がお勧めです。リンパの流れをよくして免疫力を活性化します。同時に、血液の流れもよくなります」
リスクが高い状況が、これから先も延々と続くわけではない。それだけに、できる予防策は重ねておいても損はないだろう。
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