「第6波の死者はコロナでなく細菌性肺炎が原因」 専門家が指摘、予防法は?
「人工呼吸器やECMOを使うケースが激減」
だが、それでも「デルタ株までにくらべれば重症化リスクは減っている」と寺本教授。そこで、デルタ株までと比較したオミクロン株の特徴を、あらためて寺本教授に説明してもらう。
「ウイルス性肺炎は一般に、重症化リスクが低い疾患です。ところが、デルタ株までのコロナウイルスは肺のなかで急速に増殖し、さらには血栓まで作ってしまう性質があり、特殊で悪質なウイルス性肺炎を引き起こしました。結果として、酸素濃度が一気に下がってARDS(急性呼吸窮迫症候群)を発症し、人工呼吸器や、最悪の場合、ECMOまで使っていました。当時は、ここまで一気に症状が悪化するウイルス性肺炎の治療経験がある医師がいなかったので、医療現場がパニックに陥ったのです」
それがオミクロン株に移行して、どう変わったか。
「悪質なウイルス性肺炎を引き起こすことがほとんどないので、ARDSにも至らず、人工呼吸器やECMOを使うケースも激減しました。私が勤める病院でも、最重症の患者用の人工呼吸器が設置された治療室は現在、一人も使っていません。ですから、昨年末におよそ170万人だった累計感染者数が、現在450万人ほどに増えていますが、死亡率をみると、昨年末のおよそ半分です」
コロナで直接、は少ない
実際、全国の死亡率を見ると、第5波の0.4%に対し、第6波は0.11%だという。それでも、感染者数という分母が大きければ、どうしても死者数は多くなる。そこに寺本教授は、
「コロナに感染していれば、直接の死因がコロナウイルス自体ではなくても、すべてコロナ死にカウントされているから」
という理由を加える。事実、厚生労働省は各自治体に、コロナ患者が入院先や宿泊及び自宅療養中に死亡した場合、「厳密な死因を問わず、全数を公表する」ように通知している。このため、直接の死因はコロナ以外であっても、コロナに感染していれば、コロナ死として公表されるのである。
寺本教授が続ける。
「デルタ株までは、亡くなる方が50~90代まで比較的均等に分布していましたが、現在はほぼ70~90代の高齢者に限定されています」
事実、70代以上が死亡者の91%を占めている。
「そこからわかるのは、デルタ株まではウイルス性肺炎によって引き起こされたARDSによって、つまり、コロナウイルスが直接の原因で亡くなる人が多かったのに対し、現在はコロナが直接の原因で亡くなる人は少ない、ということ。現在は高齢でコロナに感染したために体力が衰え、基礎疾患の悪化や老衰、誤嚥性肺炎などで亡くなる人の割合が増えているのです」
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