「あさま山荘事件」で人質に取られた夫妻の50年 別の保養所で定年まで管理人

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日本舞踊が生きがい

 郁男さんはその後、旧軽井沢にある諏訪神社の役員になったという。

「毎日のように神社に足を運んで丁寧に時間をかけて御朱印を揮毫しています。ただ、最近はコロナ禍で参拝客の足も遠のいてしまったので、あまり神社に顔を出していません。郁男さんは、仲間内でも“事件”のことを話したがらない。事件当時、いろいろと嫌な思いをしたからでしょうね……」(同)

 218時間にわたって囚われの身となった泰子さんは好奇の目に晒される。そして、解放された彼女が犯人側に「大事にされていました」と語ったことなどが取り沙汰され、〈警察官が殉職しているのに不謹慎だ〉とバッシングを浴びてしまうのだ。そうした経緯もあり、事件直後を除いて夫妻はメディアの取材にほとんど応じていない。一方で、夫妻は毎年、殉職した警察官の顕彰碑に足を運んで追悼を続けているという。

 泰子さんの近況について先の知人は、

「日本舞踊が大好きで地域の人たちと一緒に楽しんでいる。日本舞踊が生きがいという感じでね。いまは趣味に生きているんです」

 夫妻の自宅を訪ねると、作務衣姿の泰子さんが穏やかな笑顔で応対してくれた。だが、

「すみません、取材はお受けしていないので……。先日もNHKからの依頼をお断りしたばかりなんです」

 50年の月日が経ったいまも、当時のままの姿を残すあさま山荘。同様に、夫妻の脳裏から事件の記憶が消え去ることはない。

週刊新潮 2022年3月3日号掲載

ワイド特集「人生劇場の舞台裏」より

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