久慈アナの涙もさんまの計算のうち? ネットニュースを量産する素人いじりの真骨頂

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従来の芸人とは真逆の「女・子ども」の扱い方 想定外の笑いを引き出す素人いじりの手腕

 お笑い界のルールに沿わない女性芸能人――鬼越の言葉を借りれば「女・子ども」、を苦手とする芸人は多いはずだ。松ちゃんもどちらかといえばそのタイプではないだろうか。彼と相性のいい女性は、さんまさんと真逆だ。「ごっつ」メンバーだったYOUさん、小池栄子さんや指原さん、三浦瑠麗さんなど。その場の空気を読んで冷静に振る舞える面々が思い浮かぶ。目立とうと余計なことをせず、松ちゃんが決めたルールを乱さない、大人の女性ばかりである。

 一方でさんまさんは、むしろ「女・子ども」の爆発力を面白がる人だろう。何をしでかすかわからない相手、特に素人いじりで右に出る者はいない。「明石家サンタ」に「恋のから騒ぎ」、「あっぱれさんま大先生」。「ホンマでっか!?TV」も、専門家たちをイジリ倒す。素人こそ、想定外の笑いを生むと信じているのだろう。

 先日は番組内で、ぼる塾・きりやはるかさんが「結局、男は見た目で判断する」とプチ整形をカミングアウトして話題になった。さんまさんの番組ならではだと思う。女性の恋愛話はオチがないと言われがちだし、ルッキズムや整形の是非など、さまざまな地雷を含んだ話だった。他のMCだったら難しい空気になったかもしれない。

 でもさんまさんは、怖いもの知らずの発言にこそ飛びつく人である。はるかさんが空気を読まないことも前々から知られていた。素人いじりの天才にとっては、久慈アナ同様に「女・子ども」感が強いフリが来たと、腕が鳴ったのではないだろうか。

「お笑い怪獣」の光と影 テレビを主戦場としながらネットニュースを量産する稀有な立ち位置

 相手が口にしたフレーズを気に入ると繰り返し、自分の持ちネタにすることもしばしばあるさんまさん。還暦を過ぎても誰より笑いを取ろうとする姿には、圧倒的な明るさと華、そして怖さがある。ナインティナインの岡村隆史さんをして、「お笑い怪獣」と呼ばしめるゆえんだろう。テレビ露出が日本で最も多いテレビスターとして、ギネス記録を持っているのも納得だ。

 一方で不遇な生い立ちや、離婚後も子煩悩な様子、日航機墜落事故をすんでのところで逃れた逸話など、私生活にほのかな影を感じるのも視聴者を惹きつける理由ではないだろうか。画面の中では乱暴でも、プライベートでのファンサービスが良い人としても有名である。

「女・子ども」を泣かせても笑いを取ろうとするハングリーさは、テレビを主戦場としつつもネットニュースを量産する稀有な立ち位置を作った。そしてテレビが一番欲しいものと一番欲しくないものは、どちらもネットを騒がせることのはずだ。ネットで話題!と宣伝したい。でも、ネットで炎上!は絶対避けたい。そんな器用な芸当ができるのは、さんまさんくらいだろう。各局が重宝するのもよくわかる。やっぱり普通の人間ではなく、怪獣に違いない。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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