実はスポ根の藤澤五月、作戦会議は激論… テレビには映らない「ロコ・ソラーレ」の真実
陰の功労者
その藤澤から、表彰式で銀メダルをかけられたのが、“5人目の選手”こと石崎だ。スキージャンプのレジェンド・葛西紀明を超えて、冬季五輪での日本選手最年長メダリストとなった。
彼女はもともとチーム青森のメンバーで、本橋さんと共にバンクーバー五輪にも出場。13年に第一線を退き、ロコ・ソラーレが銅メダルを獲得した平昌五輪ではテレビで解説を務めた。そんな彼女は三顧の礼どころか、“断られ続けても千回告白”(吉田知那美)されて、ロコ・ソラーレに加入することになった。
チーム青森を支援した、イシダスポーツの石田順一社長はこう語る。
「石崎選手はバンクーバー五輪をはじめ、国際経験が豊富。しかも、作戦や戦略を分析する能力に長けていたので、ロコ・ソラーレに勧誘されたのだと思います。メンタルが強く、プレッシャーのかかる場面でも冷静にショットを選択できる彼女は、今回の五輪でも大きな役割を果たしたと思います」
試合前夜に、会場でストーンのクセや曲がり具合などを確認する「ナイトプラクティス」という作業も完璧にこなした。彼女が陰の功労者と呼ばれるゆえんだ。
試合前の激しい議論
他方、ロコ・ソラーレの代名詞といえば試合中の「もぐもぐタイム」だろう。
平昌五輪では地元・北見市の菓子店が作るチーズケーキ“赤いサイロ”が注目の的に。今回は、イチゴや紀州産の梅干し、干し芋にどら焼き、ゼリー飲料などを頬張って体力を保った。食事を巡ってはこんな話も。ロコ・ソラーレが五輪出場を決めた昨年9月の日本代表決定戦では、稚内市にある宿泊施設「モシリパ」の経営者・武重美亜さんの手料理が勝利の原動力になった。
「特に皆さんが気に入ってくれたのはサラダ風ちらし寿司。酢飯の上にアボカドや水菜、レンコンの甘酢漬け、椎茸の煮物など野菜をふんだんに盛ったものです。疲労を蓄積しないよう炭水化物や揚げ物は控えめにしましたね」
そう語る武重さんは、彼女たちの知られざる姿を目にしていた。
「テレビでは可愛らしい表情ばかりがクローズアップされますが、食事の前に行う作戦会議は真剣そのもの。ふだんの笑顔はなく、お互いの考えを包み隠さず、激しくぶつけ合っていました。見えないところで、絶えず本音のやり取りを積み重ねてきたからこそ、あれほど強い信頼関係が築けたのだと思います」
地元の夢、周囲の願い、メンバーの勝利に対する執念。全ての思いが結実した、珠玉の銀メダルだった。