中国はプーチンにしてやられた… 「ロシア寄り」の姿勢がアダとなる
ロシアのウクライナ侵攻で中国は苦しい立場に追い込まれつつある。
中国はロシアとウクライナに対し、問題解決に向けて交渉するよう強く求めているものの、西側諸国に対抗するパートナーであるロシアへの配慮から、これまでのところ「侵攻」という表現を使っておらず、国際社会からの批判が高まっているからだ。
欧米諸国は再三にわたってロシアのウクライナ侵攻について警告してきたが、中国側は一貫して「米国政府がロシアの脅威を誇張するものだ」と聞く耳を持たなかった。
習近平国家主席は2月4日の北京冬季五輪開会式に出席したプーチン大統領と会談した。ウクライナ問題についてのロシアの立場を支持し、ロシアとの協力関係強化に関する共同声明に署名したことで中国側は「戦争発生のリスクが薄らいだ」と誤って判断してしまったのではないかとの指摘がある。
ロシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。ロシアの原油輸出量(日量約500万バレル)の3分の1が中国向けだ。ウクライナにとっても中国は最大の貿易相手国だ。ウクライナから中国に輸出されている主要品目は鉄鉱石やトウモロコシなどだ。ウクライナは2017年に中国の「一帯一路」にも参加している。
ロシアとウクライナで事業を展開する中国企業は「事業への影響は限定的だ」としているが、中国にとって両国が戦争状態に陥ることはあってはならないことだった。
プーチン大統領はパートナーである中国に対して事前通告を行うことなく軍事作戦を開始したとされており、中国は期せずしてロシアの戦争に加担する形になってしまった。「北京冬季五輪をなんとか無事に乗り切った」と思っていた矢先のロシアのウクライナ侵攻で中国は「プーチンにしてやられた」と苦虫を噛んでいることだろう。
今年秋の共産党大会を成功させるために実施したはずの五輪にケチを付けられた中国だが、さらに気がかりなのは経済の状況が芳しくないことだ。
目立つ“軌道修正”
2月の中国経済も先行指標から低調だったことが明らかになっている。
1月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.9%増で2ヶ月連続で伸びが鈍化した。昨年秋から雇用の回復がもたつき、節約志向から抜け出せないことが災いした。中国政府は「非正規労働者は2億人に達し、景気悪化で雇用圧力が一段と強まる」と認識しており、「経済の安定のためなら何でもやる」との姿勢を鮮明にしている。
習近平国家主席は1月下旬「野心的な低炭素化目標の追求でエネルギーや食糧の安全保障、一般市民の生活を犠牲にしてはならない」と述べ、景気が減速する中、国際社会が最優先課題として取り組む気候変動対策に慎重な姿勢を示した。
中国が墨守してきた新型コロナの完全封じ込めを目指す「ゼロ・コロナ」対策についても政府の専門家が軌道修正を図る可能性に言及している。「これまでの対策を続けていると経済や市民生活に深刻な影響が出る」との声が強まっていることがその背景にある。
さらにマネーロンダリング対策として3月から導入予定だった個人預金の監視強化も実施直前に先送りされた。経済活動のさらなる悪化が危惧されたからだ。
2月19日は中国で改革開放を進めたかつての最高指導者である鄧小平の没後25周年だったが、北京市で大規模な追悼行事は行われず、国営メデイアも沈黙を保った。「共同富裕(ともに豊かになる)」を掲げる習近平指導部が自らの路線に反対する勢力が結集する契機になりかねないと警戒したからだと言われている。
「先富論(豊かになれるものから先に豊かになれ)」を掲げた鄧の人気はいまだに根強く、「改革開放のおかげで豊かになれた」と考える共産党員も多いとされている。
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