軽い気持ちで不倫したら、妻も“仕返し”で不倫のてん末… 41歳男性が語った「覚悟」

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信博さんの対応がまずかった

 数ヶ月後の夕方、彼女は会社を出たところで待ち伏せていた。あえてごく普通に「お疲れさま」と言って歩きだすと、彼女は黙ってついてきた。駅まで行くと、後ろから「どうして私と会ってくれないんですか」と聞かれた。

「あのときはふたりとも雰囲気に流されたんだ、と言うしかなかった。言外に、恋愛ではないという意味も込めました。でも彼女は『あの夜、愛はなかったということですか』と迫ってきた。愛とか恋とかいうつきあいではなかったはずだけど、それを言ったら逆上されそうで……。『僕は結婚しているし、不倫はしたくないから』と言ったら、もうしちゃってるじゃないですかと言われた。どうしたらいいんだろうと困り果てました」

 うかつに関係を持ってしまったものの、その後の展開をしかけられたときに失敗する男性は少なくない。こういう優柔不断な対応が女性の神経を逆なでするのだ。最初から遊びだと相手が割り切っていないのなら、謝り倒して解放してもらうしかないはずなのだが。

「僕は彼女を傷つけたくなかったから、『このままつきあってもきみを傷つけるだけだ』と言ってしまった。そうしたら今、捨てられるほうが傷つくと言われて。祖母の話を持ち出していましたね、今、とにかくひとりでいるのがつらい、あなたがそばにいてくれたら立ち直れると思う、とか。でもさすがに僕もここから一歩踏み込んだら、別の世界が待っていそうで怖くなったんです。だから『妻に疑われているから』と言ってしまった」

 相手の気持ちが高まっているときに、そんなあやふやな言い訳はよろしくない。たとえ傷つけても、土下座してでも謝り倒す覚悟を決めなければいけないときだったのだ。

「彼女、すぐに妻に連絡したようです。『奥さんが、私と信博さんの関係を疑っているみたいですけど、疑惑じゃないです。彼はこの前、泊まっていきました』と。帰宅したら、妻が『さっき、電話があったよ』と彼女の名前を出しました。『浮気してるんだね、それとも本気?』と淡々と言われました」

 凌子さんの性格だから、ネチネチとは言われない。ただ、浮気なのか本気なのか、どうするつもりなのかを「述べよ」と言われたそう。ふだんなら笑ってしまうような妻の言い方に、そのときばかりは背筋が凍りついた。

「ごめんなさいと言うしかなかった。ただ、恋愛感情はまったくなかったし、たった1回のことだとも付け加えた。もちろん、彼女にはきちんとわかってもらうようにするから、と。妻は『わかった』とすぐに言ってくれたけど、『このことを私がどう思うか、これからどうするか、あとは私の判断でいいわね』って。怖かったですね。離婚とか、ないよねと言ったら、『それは私がこれから考える』としか言わない。いつ妻からの審判が下るのか、どんな気持ちで待てばいいのかわからない。ただ、今まで以上に家事と育児をするようにはしました。ちょうど妻が職場復帰するところだったので、週末はひたすら子どもの面倒を見ていました」

 そんな努力のかいがあったのか、1ヶ月後、妻は言った。

「本当にショックだった。あなたが簡単に私を裏切ると思っていなかったから。でもこの1ヶ月、あなたの言動を見ていて、やはり生活していくにはあなたが必要だと思った。ただ、私の心のためにあなたが必要かどうかはわからない。それは今後、ともに生活していくことで判断したいと思う」

 つまり、とりあえずの離婚はないということだ。が、信博さんは少し物足りなかった。

「オレは凌子のことが好きなんだよ。凌子は? と聞いたら、嫌いじゃないけど前みたいに好きになれるかどうかわからないと。相変わらず率直でした。大好きな凌子の笑い声を聞けなかった1ヶ月、僕は本当に寂しかった。自分が悪いのはわかっている。時間がかかっても、あの笑い声を取り戻してほしいと伝えました。『私の心は今、半分死んでるようなものなのよ、わかる?』と彼女はつぶやいて、ポロリと涙をこぼしました。あの気の強い凌子の大きな涙の粒を見て、ああ、ここまで傷つけてしまったのかと愕然としました」

 そこに至って、彼はようやく本気で反省したのだという。

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