ミサイル発射でロシアを支援… 北朝鮮がウクライナ侵攻で得た最大の教訓とは

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北朝鮮が得た最大の教訓は

 北朝鮮は、ロシアがウクライナ戦争に勝利すると考え、核とミサイル技術の入手ルート確保を狙った。また、ロシアからの経済、食糧支援も期待した。そして、27日には「偵察衛星開発」を理由に、再びミサイルを発射した。明らかなロシア支援だ。韓国への軍拡競争の意図も込められた。

 実は、ロシアの外務次官は2月8日に駐露北朝鮮大使と会談していた。異例のことだった。北朝鮮の外務次官も同日、駐北朝鮮ロシア大使を呼び、会談した。両国の発表によると、この一連の会談で朝露の戦略関係強化と、北朝鮮のロシア支持が話し合われた。明らかにロシアのウクライナ侵攻の意図が、伝えられている。

 これを受け、北朝鮮外務省は2月13日に、ロシアを支持する次の立場を表明した。「米国がロシアのウクライナ侵攻説を大袈裟に広め、東欧諸国に数千人の武力を急派しているのは、ウクライナを巡る軍事的緊張を段階的に激化させ、ロシアを力ずくで制圧するために自らの武力増強を正当化する大義名分を作ろうとしている」

 北朝鮮外務省は、この発表の中でプーチン大統領とラブロフ外相の発言も引用し、ロシア支持をあからさまにした。

 さらに、ウクライナ侵攻後の26日には「世界が直面している最も大きな危険は、国際平和の安定の根幹を崩している米国とその追随勢力の強権と専横である」と、米国を非難した。ところが、これは外務省研究員の主張で、個人の主張と言い訳できる余地を残した。米国や国際社会との全面対立を避けたい北朝鮮の弱気が読み取れた。中国がロシア全面支持を避けたため、やや腰が引けた格好だ。

 北朝鮮がロシアの戦争を支援したのは、韓国を相手にした統一戦争の可能性を探ったためでもある。欧米諸国の当初の対応は、強力な制裁の意向を避けた。北朝鮮は、朝鮮統一戦争への期待を抱いただろう。だが、その後に欧米はロシアの孤立化に動いた。

 今回の戦争で北朝鮮が得た最大の教訓は、核兵器を持たないと米国に攻撃される、との思いだ。ウクライナは独立の際に核兵器を放棄したために、ロシアの侵攻を招いたと考えた。だから、北朝鮮は核兵器を放棄すれば、自らも崩壊させられる、と学んだ。北朝鮮の核放棄と朝鮮問題の解決は一層困難になった。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、東京通信大学教授。早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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