【カムカム】モモケン親子の精神的和解で見えてきた最終回までの道筋

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

ひなたと文四郎は結ばれる

 一方、ひなたと大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)は結ばれるに違いない。これは分かりやすい。ひなたは口では文四郎を貶しながら、懸命に応援している。

 ひなたは明るくて裏表がなく、他人を羨んだりもしない愛すべてキャラクターであるものの、弟の桃太郎(幼少期・野崎春)の面倒をよく見ているとは思えない。ところが文四郎の世話は焼く。好きなのは明白だ。

 第82話では自分で焼いた回転焼きを文四郎に食べさせた。そうしたいために練習した。思い起こすと、安子はるいとの生活を守るためにあんこをつくり、るいは錠一郞と暮らすために回転焼きを焼いた。みな愛する人のため。血は争えない。

 一方、ハートフルコメディだけに藤本さんの遊び心も感じさせる。安子と後の結婚相手・稔(松村北斗)は1939年、安子の実家の和菓子店「たちばな」の店頭で初めて会った。第3話だった。るいとジョーの出会いは「竹村クリーニング店」のカウンター。るいの勤務先だった。1962年、第40話だ。

 ひなたと文四郎が初めて会ったのは「大月」の店先。1983年4月、第71話だった。みんな店頭で、運命の人は客。つくづく細部までよく考えられた脚本だ。

 演出も凝りに凝っている。例えば題材の1つである「ラジオ英語講座」のテキストを本屋で探す場面。安子は第4話で自分のため、るいは第68話でひなたのため、テキストを見つけようとした。

 時代は1939年と1976年。全く違う。ところが、本棚の形式やカメラ位置、照明の具合をほぼ一緒にしてあったから、安子とるいの姿がオーバーラップした。誤解によって離ればなれになった母娘が、同じような軌跡を辿っていることが印象付けられた。

 朝ドラ最大のヒット作「おしん」(1983年度)に対する視聴者の熱狂は当時、「おしんドローム」と称された。安子とるいの和解などが耳目を集める「カムカムエヴリバディ現象」も4月8日の最終回まで過熱の一途に違いない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。