「ウクライナ侵攻報道」NHKは内部から「腰が引けすぎ」と批判…際立つCNN女性記者の“ジャーナリスト魂”
リビウまでなら行けただろう
「うちがキエフで取材したのは、2月上旬に、緊張が高まる市民の様子を伝えたのが最後です。03年に始まったイラク戦争や14年のクリミア危機の時は、他社の追随を許さない現地ルポを敢行しましたが、最近、上層部がおかしな雰囲気になっちゃって……。2月11日に外務省がレベル4の『邦人退避勧告』を出した時点で、原則として人を入れないって暗黙のルールができてしまったんです」(前出・NHK報道局幹部)
もちろん人命は何よりも優先すべきであろう。だが、局内では「それにしても腰が引けすぎ」と批判が高まっているという。
「刻一刻と状況は変わりますが、NNNがいたリビウは、少なくとも24日時点では安全な場所だった。うちは高い受信料を頂いているのですから、ギリギリのところで踏ん張って報道できたはずなんです」(同)
海外メディアでは、戦争報道の雄として知られる米ニュース専門チャンネル・CNNの独壇場だった。キエフどころか、さらに東に行ったロシアとの国境を接する街・ハリコフから中継。キエフ近郊で起こった銃撃戦も、防弾チョッキをまとった男性記者が迫真のレポートをした。
中でも視聴者を驚かせたのは、女性記者のクラリッサ・ワードさん(42)だろう。爆発音が鳴り響くハリコフで、地下鉄に逃げ込む市民たちの混乱を伝え続けた。SNSなどによると、彼女はイェール大学卒のイギリス系アメリカ人で2児の母。米テレビ局のABCやCBSを経てCNNへ。イラク戦争や東日本大震災、アフガニスタン紛争などの取材歴があるという。
休暇はカリブで1カ月
「CNNは開局11年目の91年に起きた湾岸戦争で、空爆を受けるバグダッドから実況中継して存在感を示したテレビ局です。日本のテレビ局には考えられない取材ですよね」
こう語るのは、とある戦場取材が豊富なジャーナリストである。
「今回、CNNは少なくともウクライナに3チームは出しています。レポーター、カメラマン、照明、音声、その後ろには映像の受け手やサポート役も数人いて、1チーム15人くらいの編成。衛星回線で中継すれば、一回50万円くらいかかりますし、毎日数百万円飛ぶくらいの莫大な予算でやっています。あそこは、報道機関と言うよりは軍隊みたいなところ。拘束されたら昇進するんです。会社が手厚く保険をかけているので、万一殉職しても遺族には潤沢な保険金がおりるでしょう」
記者たちは百戦錬磨の戦争ジャーナリストだ。
「もちろん引き際は心得ています。ギリギリのところで取材してさっと引き上げる。みんな肝っ玉が座っていますよ。年収は2、3000万円の高給取り。がっつり取材した後は、『カリブで一ヶ月のんびり過ごすか』って人たちです」(同)
このような逞しいジャーナリストたちの取材で、日本人も戦争の実態を知ることができるのだ。