維新にすり寄る医療グループに「疑惑の市有地取引」 吉村市長時代に事業者が決定
コロナ対応に追われる大阪の医療業界が憤っている。大阪中心部の広大な元公有地の開発事業者に選ばれたのは、維新との関係ささやかれる医療グループ。地元医療界が猛反対する中、新病院の建設工事に着手したが、吉村洋文・大阪府知事に怒りの声は届かず……。
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相変わらず日々公表される新型コロナウイルスの新規感染者数や死者数。数字に振り回される日常に終わりは見えないが、蓄積されたデータが示す「事実」の中には、知っておいて損のないものもある。例えば、
「大阪府におけるコロナの累計死者数は2月13日時点で3366人。東京を上回っています。直近7日間の100万人あたりの死者数でも大阪は1位。一方の東京は全国平均を大きく下回っていて、大阪の3分の1となっています。大阪の医療提供体制に重大な課題があるからこそ、ここまで大きな“格差”が生まれるのでしょう」(政府関係者)
大阪府の吉村洋文知事は2月8日、「医療非常事態」を宣言。医療機関に対し、コロナ患者の受け入れ体制を確保するよう要請したが、大阪の民間医療業界がコロナ対応と並行して、大阪府・市と「冷戦」を繰り広げていることはほとんど知られていない。諍いの要因は、「不可解な土地取引」と「新病院建設強行」である。
地元医療界が反対する中での建設強行
JR大阪駅から15分ほど歩くと、白い仮囲いが巡らされた広大な工事現場が見えてくる。大阪市水道局の扇町庁舎跡地で、広さは約9千平方メートル。工事現場は道を挟んで2カ所に分かれており、仮囲いの中には巨大なクレーンが計3基そびえ立つ。工事は着々と進んでいるようで、ガンガン、と重機が鈍く大きな音を響かせている。
この土地の再開発を担うのは、谷幸治理事長が率いる大阪市の医療法人・医誠会や不動産大手「ヒューリック」などのグループである。谷氏は大阪府下を中心に愛知や岡山などで複数の病院やクリニック、介護老人保健施設などを運営する「ホロニクスグループ」の代表も務めている。
「徳島県出身の谷さんは一代でホロニクスグループを築き上げただけあって、押しの強い人という印象があります」
と、谷氏の知人。
「医療の技術や知識に秀でているというより、とにかくビジネスに関して天才的な人。コロナ禍では大量のPCR検査を実施して利益を出す一方、コロナ患者の受け入れには消極的で、医誠会病院の受け入れ病床数はたったの2床です」
出身地の地元紙、徳島新聞のインタビューに、
〈患者を治す医者は卒業して、病院を治す医者をやっています〉
と答えた谷氏がこの10年来取り組んできた“計画”。それが、グループ傘下の医誠会病院と城東中央病院をそれぞれ移転して統合し、新たな総合病院を開設するというプロジェクトである。先に触れたのは、その新病院の建設工事現場。地元医療界がこぞって計画に反対する中での建設強行だった。
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