「大学院は最高で、地獄だった」 秋吉久美子が明かす50歳を超えての早大大学院生活

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大学院に通うということは…

 世間では、親が亡くなるとお葬式だとか、お墓をどうするだとか、そういうことが大事な物議です。でも私の場合、それとは別に自分なりの、つまりは両親の思いとのケジメをつける必要があった。それが大学院でした。その前に進学を勧めてくれる知人がいたこともあったんですが、公共経営を選んだのは「宿命」だったのかもしれません。父親は水を専門に研究する地方公務員でしたから。

 大学院に通うということは、自ら主体性を持ち世に発する。そのための教えを乞(こ)いたいと思ってその門を叩くことを意味します。他の誰でもない、本人の意志です。だから、言い訳もできないし、先生が好きとか嫌いとか、何に反抗するとか、青臭いことを言ってる場合じゃない。

 そうやって主体的に勉強すると、やっぱり頭の中も、心の中も風通しがよくなるんですよね。女優として「情念」と向き合うことで生きてきた私ですが、大学院で学ぶことによって「骨子」ができた感じですかね。イカだってうっすらとした骨くらいはあるんですから。いい大人に骨がないなんて情けない。ですから、みなさんが学び直しをするのも大賛成です。

 まあ、「骨のある小悪魔女優」っていうのも困りものかもしれませんけどね。

秋吉久美子(あきよしくみこ)
女優。1954年生まれ。72年に「旅の重さ」で映画デビュー。96年に「深い河」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝くなど受賞歴多数。2020年に、出生から女優人生までを追った『秋吉久美子 調書』を出版した。

週刊新潮 2022年2月24日号掲載

特別読物「人生100年時代で著名人も実践 社会人になってからの『学び直し』」より

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