“脳のゴミ”を日光で洗い流す日本発の「光認知症療法」 実現すれば安価で50代から予防も可能
錠剤化が可能
メリットはもうひとつある。抗体薬は分子量が大きいため、注射による投与しかないが、低分子化合物は錠剤化できる。つまり、常備薬のように飲める。近い将来、50代から毎日服用すれば、と冒頭で紹介したのは、光触媒を使った療法なら、それが可能だからだ。
実をいえば富田教授らは光触媒をアルツハイマー予防薬として実現させるだけでなく、その先も見ている。光触媒には汎用性があり、他の病気の治療にも応用できるからだ。
たとえばアルツハイマーは、異常なタンパク質の蓄積により発症する「アミロイドーシス」のひとつだ。他に、脳の黒質と呼ばれる場所の神経細胞にタンパク質が蓄積して運動障害を起こす「パーキンソン病」、脳と脊髄の運動神経内でタンパク質が異常に凝集して全身の筋力が衰えてゆく「ALS」(筋萎縮性側索硬化症)、そして、アントニオ猪木氏が闘病していることを明かした「心アミロイドーシス」もある。これは心臓にタンパク質が溜まり心不全を起こす難病だ。
「光触媒は、アルツハイマーのもう一つの原因物質である凝集したタウも分解できることが分かっています。それだけではなく、タンパク質の蓄積で起きる他のアミロイドーシスにも効果を示しています」(同)
いつ予防薬が実現するのか
そんな話を聞けば、いつアルツハイマー予防薬が実現するのかぜひとも知りたいところである。
「現在、マウス実験では最大用量の光触媒を投与していますが、副作用は出ていません。今後、ヒトへの投与へ向けて、安全性をさらに確かめると共に、適切な投与量と投与頻度を測っていきます。3年のうちに臨床試験を始めたいと思っています」(同)
富田教授らは、光認知症療法についてすでに特許を取得。1年前にバイオベンチャーと、創薬に向けたライセンス契約を結んでいる。自分が自分でなくなる病気「アルツハイマー」の恐怖から人が解放される日は、そう遠くない。
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