信じがたい偶然で「妻の過去」が明らかに… 41歳が“男泣き”で離婚届を出したてん末

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 信じられないような偶然というのがこの世の中にはある。どんなに天文学的な数字の確率であっても、それがこと人間関係にからむものであれば、そして話している人が信用できるのであれば、やはり個人的には信じてしまう。というか信じるしかない。体のあちこちから見えない血を流しながら話している人を目の当たりにすればなおさら……。【亀山早苗/フリーランスライター】

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「半年ほど前、離婚した友人がいる。理由がはっきりしないんだけど、どうも入り組んだ話らしい」

 そう言って知人が紹介してくれたのは、浅井亮司さん(41歳・仮名=以下同)だ。人のよさそうな雰囲気だが、最初は表情に乏しく、言葉数が少なかった。どこからどう話したらいいかわからないように見えた。

「去年の秋に離婚届を出しました。でも僕はまだ、元妻の沙映子が好きなんだと思う」

 絞り出すような声でそう言った。だったらなぜ離婚したのかという質問を飲み込む。離婚せざるを得ない事情があったからに違いないのだから。

「沙映子と知り合ったのは8年前です。出会いは偶然でした。仕事の息抜きにときどき行く会社の近くのカフェで彼女が働いていたんです。感じのいい女性でした。顔を合わせるうちに世間話をするようになって。あるとき会社を出たらばったり会った。『私も今、仕事が終わって』というので、軽く食事でもと誘ったんです。最初は僕が一方的に好きになったんだと思う。彼女は6歳年下で27歳。それを機会に会うようになって、いつしかお互いに身の上話をするような仲になっていました」

 沙映子さんは地方から東京の大学に進学した。ところが大学2年生のときに父親が急死。必死でアルバイトをしてなんとか大学を卒業し、希望の会社に就職も決まった。しかしがんばりすぎたのだろう、3ヶ月目のある日、起きられなくなった。

「何が起こったのかわからなかったし、自分で自分がふがいなくてたまらなかったそうです。メンタルが限界だったんでしょうね。入社して3ヶ月で休職、半年たって復帰したけど、もうついていけず、さらにストレスがたまって退職した。それからはひたすらアルバイトを掛け持ちしてなんとか生活している、と。でも機会があればちゃんと仕事をしたい、希望は捨ててないと語る彼女に、僕は気持ちを揺さぶられました」

 亮司さんも自分のことを話した。27歳のころ、突然、両親が離婚したこと。理由はまったく説明されなかった。仲がいい夫婦だと思っていただけにショックだった。もしかしたら子どもに仲がいいと思わせていただけで、仮面夫婦だったのかもしれない。それによって、亮司さんは当時、結婚を視野に入れてつきあっていた女性と別れた。結婚に幻滅してしまったのだが、それも今思えば短絡的すぎたと後悔していた。

 恋人に心を残しているわけではない。大人になっていたとはいえ、両親の突然の離婚を冷静に受け止めることができなかったのだ。

「彼女は目を潤ませて聞いてくれました。そして『大変だったね』と言ってくれました。彼女ほど大変な人生ではなかったのに……」

 両親が離婚する理由は、最後まで亮司さんには説明されなかった。ただ、「親子関係は変わらないから」とふたりとも言った。一家3人はバラバラになった。

「僕は父とも母とも個別にときどき会っていました。母は離婚してすぐ、好きな男性と一緒に暮らし始めた。それもショックでしたね。てっきり父に女性がいて離婚したんだと思っていたら、母に恋人がいたなんてね。結婚しているときからどちらも外で恋愛していたんでしょう。夫婦なんて子どもにもわからないんだなと思いました」

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