試験当日、コロナだったら浪人確定… 不条理すぎる「医療系国家試験」の受験事情
コロナ禍において、日々、献身的な対応を求められている医療従事者たち。彼らが、いま最も社会に必要とされている存在であることは論を俟たないが、肝心の成り手たちが「コロナに感染したら浪人確定」という不条理な立場に置かれているのだ。
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今年1月に実施された大学入学共通テストでは、1月15日と16日の本試験とは別に、29日と30日に追試験が行われた。追試を受けた1658人のうち、コロナ感染のため本試を受けられなかった受験生が211人、同じく濃厚接触者を理由とする受験生が252人いたことが明らかになっている。およそ460人が追試の制度によって救われたことになる。また文科省の号令により、各大学でもコロナで受験が叶わなかった学生のために追試の機会が用意されている。2月15日には、東京大学が、コロナの影響で共通テストを受けられなかった受験生4人の受験を特例で認めると発表した。
ところが、2月4日と5日に行われた医師、13日の看護師をはじめとする22の医療関係職種の国家試験に、こうした救済措置はまったく用意されていない。試験当日にコロナに罹っていれば、その時点で1年間の浪人生活を余儀なくされるのだ。
教育現場もこれを良しとしているわけではない。山梨県甲府市の「共立高等看護学院」は、ホームページで〈看護師国家試験に追試験を!〉との声明を発表したほか、
「昨年も追試措置はとられませんでしたが、現在流行しているのは重症化リスクの低いオミクロン株です。これにかかったら一発アウト、というのは不条理極まりない。厚労省は医療従事者を育てる気がないのでしょうか……」
と憤るのは、日本赤十字医療センター化学療法科部長の國頭英夫氏だ。厚労省は追試を行わない理由を「本試験と同等の試験を短期間で作成するのは困難」「心身不調による理由での追試はやったことがない」としている。その一方で、大雪を理由に追試がおこなわれた2014年の看護師試験の例もある。
「もはやコロナ感染は災害と同じ。大雪で追試を実施したのなら、今年だって十分実施する理由になったはずです。少々風邪を引いたって受験する子達は今までにもいたはずですが、これと違い、コロナに感染した受験生は、厚労省のいう『心身不調』のために試験に臨めなくなるわけではなく、強制的に受験を差し止められるのです。厚労省は一体、感染した受験生は、自分たちが悪かったから感染したのだとでも言いたいのでしょうか? また資格試験で『同じレベルの問題が用意できない』なんて理由になっていません。仮に少々難しくしたって、1年を棒に振ることに比べれば、受験生から異論はないはず。形だけの「公平性」を振りかざして、受験資格をまるまる奪うなんて、優先順位がおかしいですよ」
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