疑惑判定だらけだった北京五輪を総括 中国選手にはペナルティーが科されず金メダルを獲得
ハンガリーのスケート連盟は激怒
さらには7日に行われた男子1000メートルでも、準決勝1位でゴールした韓国選手が、中国選手のレーン変更を遅らせたという理由で接触もしていないのに失格を言い渡された。そして決勝では、当の中国選手がゴール手前で1位だったハンガリー選手のユニホームを引っ張って転倒させてしまった。
「審議の結果、ハンガリーにペナルティーが科され、中国選手が繰り上がりで金メダルを獲得しました」
とは、現地で取材するスポーツ紙の記者だ。
「ハンガリーのスケート連盟は大激怒で、国際オリンピック委員会(IOC)に審判団への調査を要請し、同じく準決勝で失格となった韓国の競技団体とも連携する意向を示しています。ショートトラックは韓国のお家芸ですから、ソウルの中国大使館前には抗議のデモ隊が殺到しています」
人間がジャッジする以上、ルールの解釈や運用については個々の競技の専門家同士で論争の余地はあろう。
だが、過去の五輪を振り返っても、これほど“疑惑判定”が並ぶ大会はなかったといってよい。こうまで続くと、やはり開催国の“お国柄”が影響しているのではと勘繰りたくもなる。
そもそも4年に1度の大舞台である会場自体、アスリートファーストなのかが疑わしい。開催地である北京は降雪の少ない地域で、人工雪による会場設営が行われてきた。中国人民解放軍が145発もの気象用ロケット弾を空に打ち上げ、雪雲を発生させようとする様子が滑稽に伝えられたが、とても笑い話では済まされない。
無念の欠場を決めた
国際スキージャーナリストの岩瀬孝文氏に聞くと、
「天然のものとは異なり、人工雪だと地面が氷のように固まって、ジャンプ競技でも膝や足裏などへの負担は通常より大きいと思います。実際、スノーボードでは芳家里菜が公式練習中に脊椎損傷で欠場。同じく女子代表の中村優花も膝の怪我を治して五輪に臨みましたが、練習段階で膝の靭帯を痛め壊れてしまうのではと棄権を余儀なくされています」
フリースタイルスキーの近藤心音も、練習中に右膝の靭帯を損傷して無念の欠場を決めた。そんな彼女たちが足を運んだ会場は、北京郊外に建設された雲頂スノーパーク。会場は、折からの強風を受け、人工雪が氷のように固まって、世界からやってきた選手やコーチから懸念の声が絶えなかったという。
岩瀬氏は続けてこう話す。
「それほど危ないハードなコンディションだったわけです。コース作りではしっかり固められていましたが、結構キツくなりすぎて。選手は懸命にやるしかなく、もう少し柔らかさがあっても……」
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