【韓国大統領選】「選挙カーで中毒死」野党候補一本化を「安哲秀」候補が断念したワケ

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街宣車内での死亡事故

 来月9日に投票が行われる韓国の大統領選挙は、2月15日から公式の選挙運動期間がスタート。立候補した14人の候補者らは全国行脚を始めた。しかし、開始早々に有力候補3番手につけていた「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)陣営で重大な事故が発生し、韓国内は騒然としている。現地在住・羽田真代氏のレポート。

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 安哲秀候補といえば、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補に次ぐ有力候補者だ。

 彼は1月末に開かれた海外メディアとの記者会見で「絶対に国内政治のために外交を利用しない」と述べていた。就任当初から反日外交を続ける文在寅(ムン・ジェイン)大統領や、2015年の日韓慰安婦合意について「不適切だ」「大統領に就任すれば日本政府が拠出した10億円を返還する」などと主張する李候補との差別化が際立っていた人物だ。

 彼の支持率は李・尹両候補と比較すると大幅に劣るが、大統領候補討論会には必ず呼ばれる一人で、年末年始にかけ支持率も少し上昇していた。

 安候補は尹陣営に「野党候補一本化案」を持ち掛け、大統領選挙にラストスパートをかけようとしていたが、この重要な局面で「街宣車内での死亡事故」という重大な出来事に巻き込まれた。

違法改造されていた

 15日の17時24分頃、韓国中部の天安(チョナン)市内の道路に停車していた40人乗りバスの中で、選挙活動に参加していた論山(ノンサン)・鶏龍(ケリョン)・錦山(クムサン)選対委員長の70代男性と、バスの運転手である50歳男性が意識不明の状態で倒れているのを他の党員が発見。その後、搬送された病院で死亡が確認された。

 このバスのトランクルーム内には発電機が搭載されており、バスに設置されたLED電光掲示板に電源を供給していた。今回発生した死亡事故は、発電機を稼働させたことによって車内に一酸化炭素が蔓延したために起こったものと見られている。

 事故当時、トランクルーム内の一酸化炭素濃度は4080ppmで、70代男性が倒れていた後部座席は2250ppm、50代運転手が倒れていた運転席付近は1500ppmだったという。

 大気中の一酸化炭素濃度が800ppmを超えると、45分ほどで目まいや吐き気などの症状が現れ、2時間で意識不明、2~3時間で死亡に至るとされている。環境や吸引時間によって症状に差が出るものの、この時バスの窓や扉はほとんど閉まった状態だったと報告されているから、狭い車内に一酸化炭素がすぐに蔓延したのだろう。

 実際、バス内部に設置されていた防犯カメラの映像から、死亡した2名が車両停止後わずか20分ほどで呼吸困難を起こし、1時間強で意識を失った姿が確認されたと警察が発表している。

 警察のその後の捜査によって、安候補が使用していたバスは違法改造されたものだったことが発覚。警察はバスの改造を行った業者の捜査にも乗り出している。

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