誰が大統領になっても韓国は「内紛の時代」へ 「レミング」が生む李朝への先祖返り
韓国政治の自壊が止まらない。「内部抗争のあげく滅んだ李氏朝鮮と同じだ」との自嘲が漏れると韓国観察者の鈴置高史氏は言う。
李朝の党争が復活
鈴置:2022年2月のある日、韓国の識者A氏が電話で「李朝の党争が再発した」と言ってきました。最終局面に入った韓国の大統領選挙で左派、保守の両陣営ともに「勝ったら相手候補を裁判にかける」と宣言していて、それが「口だけ」で終わりそうになくなってきたからです。
1月22日、与党「共に民主党」の大統領候補、李在明(イ・ジェミョン)氏は遊説で「負ければ無実の罪で刑務所に行くことになる」と述べました。世論調査でやや不利な予測が出たので、同情票を集めようとしたと韓国では見られています。
大統領を降板すると刑務所に送られるのが韓国の通例ですが「大統領選挙で落選しても監獄行き」という新たな慣例が加わることになります。
保守「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補が勝てば李在明氏だけでなく、恒例通りに前の大統領である文在寅(ムン・ジェイン)氏も裁判にかけられる可能性が高い。
尹錫悦候補は2022年2月7日、中央日報のインタビューで、大統領になったら文在寅政権の不正捜査に乗り出すと明言しました。質問に答える形でしたが「せねばならない、せねばならない。為されねばならない」とはっきりと語りました。
「尹、執権時の文政権の積弊清算を問われ『せねばならない、せねばならない。為されねばならない』[単独インタビュー]」(2月9日、韓国語版)です。
尹錫悦氏が当選すれば当然、文在寅派も李在明派も死に物狂いで抵抗するでしょう。一方、李在明氏が大統領になれば尹錫悦氏はもちろん、同じ左派ながら関係の極めて悪い文在寅氏も起訴される可能性があります。
韓国は誰が大統領をやろうが、国が大混乱に陥ります。李氏朝鮮が滅んだのは、党争――指導層の激しい内部抗争からと考えられています。A氏は「左右対立の激化で再び国が滅ぶ」と嘆き、外国人にまでこぼしたのです。
1960年のデジャヴ
A氏はかねてから現代版・党争の激化を懸念していました。文在寅政権がスタートして1年半たった2018年末のA氏のメールを、日本語を整えて引用します。
・この国は激動の真っただ中です。朴槿恵女史は1年9カ月間牢屋に繋がれていますが、文在寅大統領も遠からずして、その後を追うかもしれません。
・ソウル都心は連日、文大統領退陣を叫ぶデモで交通はマヒ寸前です。保守団体は文在寅を金正恩の手先と糾弾し、朴槿恵の弾劾無効と復権を叫んでいます。
・文在寅支持だった民主労組など左派団体まで経済失政をとりあげ反政府の示威行動に走っています。
・金正恩のソウル訪問を歓迎する集会を開く親北団体があり、これに負けじと保守団体も親米パフォーマンスをくり広げる。ソウルはデモ満開です。
・というのに警察は違法なデモを規制せず傍観しています。デモ鎮圧の責任を追及されるのが怖いのです。
・今の状況は約60年前の1960年、李承晩政権が学生デモで倒れ、民主党政権が出現した時に酷似しています。
・デモで政権が転がり込んだ民主党政権は、失政の連続と南北和解を唱える左派の蠢動で混乱に陥りました。結局は朴正熙少将が軍事クーデターを起こし、韓国は開発独裁政権に移行しました。
・現在の状況は当時にそっくりに思えてなりません。しかしクーデターを起せるほどの主体はいまのところ見当たらないのです。
・保守は分裂、左派も利権争いで内輪揉め、軍は骨抜きにされ、マスコミも国民から信用されていません。
・いろいろ書きたいことがありますが、物言えば唇寒し――。これ以上はやめます。新年の韓国は韓流ドラマよりもっと劇的に展開するでしょう。
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