「脱炭素」を急ぎ過ぎた報いで… グリーンエネルギーバブルの崩壊が近い

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化石燃料を過度に敵視したことの「報い」

 グリーンエネルギー投資を手がける運用会社からは「顧客は『脱炭素』を望んでいるが、あまり多くの機会はない。大量の資金が流れ込む状況下でグリーンウオッシュ(ごまかし)の手段と化している」との嘆き節が聞こえてくる(2月8日付ブルームバーグ)。

 実体を伴わない「名ばかりグリーンエネルギー投資」の横行についてBISも、ITバブル期のインターネット関連株や2008年の世界的な金融危機の一因となった米住宅ローン担保証券(MBS)などと同様の事態を発生させる危険性があると指摘していた。

 グリーンバブルとも言える状況の下で「グリーンSPACバブルの崩壊」が囁かれ始めている(2月9日付OIL PRICE)。

 SPAC(特別買収目的会社)とは、いわば「空箱」の状態(特定の事業を有さない)で株式公開により調達した資金で未公開企業や事業の買収を目的に設立された企業のことだ。資金調達の時点で買収する企業が決まっていないため「白地小切手企業」とも呼ばれている。SPACは日本では現時点では認められていない(ベンチャー企業の成長支援策としてその導入が検討されている)が、米国では一般的な投資先となっており、バイデン政権誕生後にEV関連のスタートアップ企業の買収が急増している。

 だが虚偽報告を指摘される企業が相次いだことから、グリーンSPACへの信頼が急速に低下し、金利上昇が後押しする形で投資資金の引き上げが顕著となっている。

 SPACでの変調が引き金となり、今後グリーンエネルギー投資全体への逆風が強くなってしまうかもしれない。そうなればグリーンエネルギー供給の急拡大に関するシナリオが「絵に描いた餅」になってしまうだろう。

 グリーンエネルギー投資の躓きの石となった金利の上昇も、本をただせば「脱炭素」を急ぐあまり化石燃料を過度に敵視したことの「報い」だと言っても過言ではない。

 いずれにせよ、グリーンエネルギーバブルが崩壊すれば、世界のエネルギー市場は一層混乱してしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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