サラ金で借りた250万円が5秒で2700万円に…FXで財産を失った4人の証言「合法だから大丈夫、が一番怖いんです」

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今が底つきだったらいい

ヒラヌマさん:わかります。僕も底つきが今だったらいいなと思っているんです。僕自身も自助グループにつながってからもFX含めたギャンブルをやめられなかった。集まりに顔を出しても、ギャンブルやめたよって嘘をついていました。

 でも、いよいよ金を借りられなくなってギャンブルをやめ、今は気持ちが楽です。みなさんの経験を聞いて楽しむ余裕がありますし、自分の過去を振り返ることもできています。一昨年の8月が底つきだったと言いたいですね。

Aさん:今のところ、自分の底は家族にバレたときだったと思います。今は妻に口座を管理してもらって、つぎ込むお金も無くなりました。スマホやネットも監視されているので、やりたくてもできない環境にすることで、依存できない状態を保っています。

 でも、家庭内でも何かあれば「あなたは借金をした」と非難され、言い返したくも言い返せない。この状態にストレスがないと言うと嘘になる。お金さえあれば、こんなことも言われないし、家庭内で肩身の狭い思いをしなくても済むのに、と。この管理がなくなったら、またやってしまうかもと思う自分もいるのも事実なんです。

Bさん:私も同じで、現時点で底と言えるのは、妻と妻の親族にまでバレたときでした。結婚した際にも借金があることを黙っていたので、みんなに騙された気持ちになったと言われました。妻ばかりではなく妻の両親に目の前で泣かれたこともあります。

 もうそんな思いはさせたくないと自力で借金の返済も始めましたし、8割方めどもつきました。ですが、返済が終わったらどうか。もしかしたらまた手を出してしまうかもしれません。

タナカさん:底つきとスリップは繰り返しますよ。でも、自助グループなどでつながっている仲間がいる価値は、「またやりたくなった」「実は手を出した」と率直に言い合えることにあります。自分の欲求を素直に認め、手を出しても意思が弱いと責められることなく、「やっちゃったかぁ。じゃあまたやめられるようになればいいね」と言い合える。そこで否定されないことが実はいちばん大事なことなんです。

 責めても病気なので解決しない。注意して治れば、「病気」ではありませんから。

短期で利益を上げられるものはない

――コロナ禍の特徴なのか、自助グループには仮想通貨やFXに手を出した大学生や若者の相談も多くなってきたと伺いました。おそらく相談すらできない人たちがもっと多くいると思います。そんな人たち、あるいはこれからやりたい人たちに言いたいことはありますか。

Bさん:プロを目指したいのならともかく、資産運用のために手を出すのはやめたほうがいい。自分ではうまくやっているつもりでも、生活資金に手をつけたり、借金をしたりしたらもう誰かに相談すべきです。今は自助グループも探しやすいと思うので、ちょっと気になることがあったら、とりあえず電話をかけてほしい。

タナカさん:経験上言えるのは、短期で稼げる、短期で利益を上げられるものはないということです。簡単にお金を稼ぐ方法はありません。そんなおいしい話は世の中にはないんです。かなりのお金を注ぎ込みましたが、断言します。おいしい思いはできません。

Aさん:副業で手を出すのならやめておけ、です。片手間で稼げるわけがないでしょう。損失補填もまったくできない。そんな理由でFXを始めてはいけません。

ヒラヌマさん:ギャンブル要素の強いもので一発逆転を夢見て借金をするのは本当にダメ。それは身を持って経験したので、断言できます。お金の問題はなんとでも解決できる。ギャンブルで借金をし始めてマズいと思ったら、まずは医者に行くよりもハードルの低い自助グループに助けを求めてもいい。絶望せずに回復を目指しましょう。命を捨てるなんてもってのほかです。

 いかがだろうか。これが合法的かつギャンブル要素が強いものにハマっていった人たちの生々しい肉声だ。ここで強調すべきは、彼らがまがりなりにも日常に戻り、回復の道を生きているという事実だろう。のめり込んで、手を出したら終わりではない。

 知恵は現場に詰まっている。事実を知り、回復を。彼らの生き方は回復の先例である。

石戸諭(いしど・さとる)
1984年、東京都生まれ。2006年、立命館大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanを経て独立。現在、「文芸春秋」「サンデー毎日」「ニューズウィーク日本版」「日経サイエンス」等に執筆。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象』(小学館)『ニュースの未来』(光文社新書)。近著『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』(毎日新聞出版)『視えない線を歩く』(講談社)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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