セコマ、ローソン、さくらみくら… 弁当チェーンを揺るがす「コンビニ」店内調理の秘密兵器は
さくらみくら便利店のスゴイ調理工程
外食大手のゼンショーが昨年から群馬県で始めたコンビニ、さくらみくら便利店では、唐揚げ弁当やカツ丼だけでなくうどん、ラーメン、パスタまで販売している。最新店舗の「館林瀬戸谷店」はイートインスペースからレジ裏の調理スペースが覗ける造りとなっており、中ではオーダーされた商品を手際よく調理していくスタッフの姿が見える。目標とする提供時間は3分。「みくら唐揚げ弁当/醤油」(470円)の場合、あらかじめ付け合わせのポテトサラダとパスタが詰めてあった弁当容器に炊きたてのごはんを入れ、ホットケースから唐揚げをトングで取り出せばもう完成だ。
ならば麺類はどうか。「家系ほうれん草ラーメン」(590円)の場合は、冷凍庫から取り出した冷凍麺を解凍機に入れて調理をしていた。湯気の約10万分の1という微粒子になった水蒸気が食材の内部まで一気に浸透するため、1分もかからない。お湯を使っていないので湯切りも不要で、そのまま丼容器にイン。麺の太さにもよるが、冷凍パスタならなんとわずか20秒で茹でたての状態になる。麺を調理している間に、1食分ずつパックされたスープを電子レンジで加熱し、ほうれん草やのりなどトッピングを添えれば2分足らずでラーメンができあがる。一般的なラーメン店の場合は、茹で麺機のお湯を沸かしっぱなしにしておくため、厨房は湯気が立ち込め、夏場は汗だくでの作業となる。だが、このハイテクな冷凍麺解凍機ならそんなこともない。サイズも高さ49センチ幅34センチと業務用厨房機器としてはかなりコンパクトと言えるだろう。
さくらみくら便利店の家系ラーメンを実食した渡辺氏がこう話す。
「僕は発祥の地である横浜在住なので、家系ラーメンにはちょっとだけこだわりを持っていて、正直合格点まではいかない。ただし麺がマズいということではなくて、スープをシンプルな醤油ラーメンとして、ワンコインの価格設定にしたらメニューとして通用する可能性はあると思います。ラーメンだとコンビニのチルド麺も500円オーバーのものが増えていて、それもおいしいんだけど、やはりできたての強みがありますから」
現状、セブン-イレブンやファミリーマートはこうしたサービスを行っていない。「店内調理」は他チェーンとの差別化になりそうだが、一方で、ただでさえ確保が難しくなっている店員のオペレーションが増えるという諸刃の剣になりかねない。またハイテクで省スペースな厨房機器はどれも高価で、設備投資として回収できるかという不安がある。
ファミレス業界に目を向けても、キッチンには包丁がなくセントラルキッチンで加工した食材で料理を提供するサイゼリヤがある一方、ロイヤルホストでは一時期導入していたカット野菜を「調理スタッフの誇りが損なわれる」「野菜本来の風味が失われる」ことを理由にやめた。極論を言えば、炊きたてのごはんを容器につめるだけで謳うこともできるから、「店内調理」の意味は幅広い。逆境の弁当チェーンとしては、“どこまで“店内で調理しているかを適切にアピールしていくことが求められそうだ。
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