巨人を待ち受ける“不吉なジンクス” 過去6回の寅年に何が起きていたのか

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僅差でのV逸

 3度目は74年である。65年からこの前年の73年まで読売は“栄光のV9”を達成していたが、V9後半には長嶋茂雄ら主力選手の高齢化と若手の台頭不足もあり、次第に苦戦。V10が不安視されるシーズンとなっていた。予想通り、6月までは勝率5割を上回るのがやっとで序盤戦は中日と阪神の首位争いに加われない状況が続いていた。8月になって10連勝をマークし、ようやく首位に立つと阪神が“死のロード”で脱落。それでも中日が6連勝で追走していた。すると読売は9月上旬に4連敗し、7連勝の中日が首位に。中旬にも4連敗し差が開いてしまう。10月に入り6連勝と必死の追い上げをみせるが、中日も5連勝しその差は縮まらなかった。

 ついに10月12日に中日の優勝が決定。読売投手陣は前年23勝した左のエース・高橋一三が前半戦最終戦でやっと初勝利を挙げる大不振に陥ってしまったのが痛かった。打撃陣も長嶋が前年終盤に右手を負傷した影響からか、打率2割4分前後の低打率にあえぐことに。長嶋の不振を埋めたのが4番の王。打率3割3分2厘、49本塁打、107打点で三冠王に輝いたものの、チームはゲーム差なし、勝率わずか1厘差の2位で前人未到のV10は惜しくも逃してしまった。この年を最後に川上が監督を勇退し、同時に長嶋、黒江透修、森昌彦らV9戦士が現役を引退している。

 熾烈を極めた優勝争いを制し、20年ぶり2度目のリーグ優勝を果たした中日は、4年ぶりにパを制した金田正一監督率いるロッテと日本シリーズで対戦。ロッテが4勝2敗で制し、50年以来、2度目の日本一に輝いた。パのチームの日本一は64年以来、実に10年ぶりの出来事であった。

 僅差で優勝を逃した74年から12年後も読売はわずかの差に泣いた。86年は“世界のホームラン王”王貞治が監督就任後3年目のシーズンであった。過去2年続けて3位止まりだっただけに優勝が至上命令である。前半戦を2位で終えると、後半戦は首位・広島東洋カープとのマッチレース状態に突入。8月下旬の直接対決で連勝し、広島とのゲーム差が最大5.5と広がった。

 ところが勝負どころの9月で広島は投手陣の踏ん張りもあって猛追。両チームの激しいつば競り合いが続いた。読売は10月1日終了時点で2ゲーム差で首位を守っていた。

 ここで注目されたのが、両チームの直接対決が終わっていたこと。そして残り試合が読売5試合、広島9試合という試合数の差であった。下位チーム相手にいかに取りこぼししないかが重要で、読売が5連勝した場合、広島は9連勝が必要なため、数字上は読売が有利な状況だった。ここから読売は3連勝し、優勝にグッと近づく。ところが10月7日の最下位ヤクルトスワローズとの最終戦で2-3と痛恨の逆転負けを喫してしまい、これが致命傷に。広島は10月2日から怒涛の8連勝を飾り、129試合目で優勝を決めたのだった。ゲーム差なし、勝率わずか3厘差のきわどい決着であった。

 読売との激闘を制した広島は、日本シリーズで2年連続パ・リーグ王者の西武ライオンズと対戦。3勝3敗1分で史上初めて第8戦にもつれ込む死闘となり、最後は3-2で勝利した西武が日本一に輝いている。

 5度目の寅年となった98年は第2次長嶋監督体制の6年目のシーズンである。開幕ダッシュに失敗するも、6月終了時には首位・横浜ベイスターズと2ゲーム差の2位と好位置につけていた。ところが翌7月は横浜が勝率7割以上をマークしたのに対し、読売は投手陣2人に思わぬアクシデントが発生。前半戦7勝とチームの勝ち頭だった趙成珉が右ヒジを故障し離脱、バルビーノ・ガルベスも試合中の暴挙で残り試合の出場停止処分となってしまったのだ。この影響は大きく7勝12敗、勝率3割6分8厘と大失速。首位横浜から8ゲーム差と一気に離されてしまった。8月以降はヤクルトとのAクラス争いに終始。チームは6ゲーム差の3位でシーズンを終えている。

 リーグ優勝を果たしたのは前年2位の横浜だった。実に38年ぶりの栄冠である。2年連続パ・リーグを制した西武との日本シリーズも横浜が4勝2敗で勝利。60年以来38年ぶり2度目の日本一の座についている。

 最後は2010年。このシーズンは第2次原辰徳監督体制の5年目で、リーグ3連覇中のチームはシーズン序盤から首位に立ち好調をキープ。6月終了時点で貯金17、2位阪神に5ゲーム差をつけていた。しかし、7月に入ると好調だった先発投手陣とリリーフ陣がともに崩壊し、月間チーム防御率が5点台に悪化。負け越して阪神に首位を明け渡してしまう。8月になると3位中日の猛追が始まり、三つ巴の様相を展開。それでも球団史上4度目のシーズン200ホームラン越え(226本)の強力打線を前面に押し立て終盤まで激しい首位争いに絡み続けた。だが、投手陣の低迷を最後まで立て直すことは出来ず、ナゴヤドームでの中日戦で2勝10敗と大きく負け越したことも響き、1ゲーム差の3位でリーグ4連覇を逃してしまう。

 最終的に阪神、巨人との直接対決をともに勝ち越した中日が4年ぶりのリーグ優勝を飾った。読売はクライマックスシリーズでも敗退し、日本シリーズ進出はならなかった。

 読売のリーグ連覇を3で止めた中日だったが、日本シリーズではシーズン3位ながらクライマックスステージを制覇して出場を決めた千葉ロッテマリーンズの前に2勝4敗1分。惜しくも日本一を逃す結果となっている。

 果たして寅年のV逸は何かの星廻りなのか、因果なのか。74年や86年、10年と僅差でのV逸も多い。逆に寅年と相性がいいのが中日と横浜DeNA、パでは千葉ロッテと埼玉西武である。千葉ロッテ以外はいずれも昨年Bクラスに沈んだ球団だ。開幕前から“波乱含みの予感”が漂っている。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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