“プロ注目”150キロ左腕は「解体新書」杉田玄白の子孫 トヨタ自動車・長谷部銀次はどんな選手なのか
地元中学の軟式野球部
社会人野球の名門、トヨタ自動車に最速150キロを誇るプロ注目のサウスポーがいる――。
トヨタ自動車といえば、古くは古田敦也（元ヤクルト）、現役では金子千尋（日本ハム）、荻野貴司（ロッテ）、祖父江大輔（中日）、源田壮亮（西武）、そして昨年の新人王、栗林良吏（広島）など多くの名選手を輩出した社会人屈指の強豪チームだ。そんな名門チームで、今年のドラフト候補として、高い注目を集めているのが本格派サウスポーの長谷部銀次である。183cmの長身から投げ下ろすストレートは最速150キロをマークするなど、東海地区の社会人選手ではプロ最注目との声も出ている逸材だ。今回は、期待のサウスポーに歩んできた野球人生とプロ入りへの意気込みを聞いた。【西尾典文／野球ライター】
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意外なことに、長谷部が野球を始めたのは、中学からと遅く、硬式のクラブチームではなく、地元中学の軟式野球部に所属していたという。
「小学校の時は兄の影響でソフトボールをやっていて、野球を始めたのは中学に入ってからです。2年秋に新チームになった時に、市内の新人戦で優勝はしましたが、決して強いチームではなく、最後の夏も2回戦で負けました」
長谷部は中学卒業後、愛知県の名門・中京大中京に進学する。
「中学2年生の時に、いろんなチームの選手が選抜されて行う試合に呼ばれたのですが、偶然、その試合を中京大中京の高橋（源一郎）監督が見ていたそうで、それがきっかけとなり進学しました。2009年に夏の甲子園で優勝したチームの愛知大会決勝を球場で見ていたので、中京大中京に進めたことは素直に嬉しかったです」
「完全に“井の中の蛙”だった」
中学時代に目立った実績のない長谷部だが、1年春の東海大会には早くもベンチ入りを果たしている。しかし、本人にとっては手応えのようなものはなかった。
「ベンチに入れてもらったのは、戦力というよりも経験のためにという意味だったと思います。地元の軟式野球では、それなりに自信がありましたが、完全に“井の中の蛙”でした。チームメイトには、硬式のクラブチーム出身の選手が多かった。負けず嫌いな性格なので、そんな中でも何とかついていこうと、必死でやっていたら、徐々に力がついていった感じがします」
ただ、やはり名門校の壁は高く、挫折を経験している。腰を負傷したことで、3年生の時は公式戦で登板できなかった。
「ストレートの最速は入学時に132キロだったのですが、2年の春には140キロを超えました。ですが、2年夏の愛知大会決勝で先発を任せてもらったのに試合を壊してしまい、夏の甲子園でも結局、出番はありませんでした。その後、腰を痛めた影響で、結局、3年生の時は公式戦で投げることができませんでした。今、高校時代を振り返ると、何も考えずにとにかくがむしゃらにやっていただけだったなと……。悔しい思いがやはり強いですね」
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