炎上参加者はどんな人間? 利用者の0.5%しかいない? 大規模調査で見えた意外な“素顔”とは

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ネット創成期の期待は…

 私たちは、このようにして形成される「ネット世論」とどのように付き合っていくべきでしょうか。

 まずは、繰り返し述べたように、「ネット世論」を「真の世論」そのものと思わないこと。これが肝要です。

 ネット上である意見が気になった時は、それに対する反対意見もきちんとフォローする。その上で聞くべきものは聞く。傾聴に値しないと思えばスルーする。そして、とりわけ炎上時には、意見が極端化していることを肝に銘じ、「変だな」「やりすぎだな」と思ったら、あなたの感覚の方が正しいと思うことです。あるいは、リアルな友人と意見交換してみるのも良いかもしれません。決して「世の中の大勢がこれなんだ。こんなにみんな怒っているんだ」などとは考えないこと。ネットに己の判断を委ねる必要はないのです。

 これも私たちの調査によれば、ネット利用者がSNSでフォローしている論客のうち、自分とは反対の政治信条を持つ論客を含む割合を調べたところ、平均4割という結果が出ました。現実社会で、朝日新聞と産経新聞を両紙購読している人はそう多くないでしょうから、これはネットならではの現象です。ネットは、自分とは反対の意見に触れ相互理解を進めるという、素晴らしい役割も果たしているといえます。中庸で穏健な意見の人を増やす面すらあります。

 その実践が、多様な人々が時間と空間を超えてコミュニケーションをとり、相互理解を深めることができる――という、ネット創成期に抱かれた期待の実現に繋がっていくのではないでしょうか。

 ネットは本来、公共圏。罵詈雑言が飛び交う、荒れた空間ではありません。現在の荒れた状態は、長期的には修復されていくと思います。

 ネットでの世論の見え方に対する、正しいリテラシーを身に付けることが重要なのです。

田中辰雄(たなかたつお )
慶應義塾大学経済学部教授。1957年、東京生まれ。東京大学教養学部卒、同大大学院経済学研究科博士課程修了。コロンビア大学客員研究員などを経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授を務める。専門は計量経済学。著書に『ネット炎上の研究』、『ネットは社会を分断しない』など。

週刊新潮 2022年2月17日号掲載

特別読物「浮かび上がってきた『正体』とは…『炎上』参加者は利用者のわずか『0.5%』 『真の世論』とは大違い『ネット世論』との付き合い方」より

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