先輩・市川美余が明かす「藤澤五月」を生かすチーム力の秘密(小林信也)

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 北京五輪に向けてカナダで合宿中のカーリング女子日本代表(ロコ・ソラーレ)のリモート会見が1月16日にあった。質疑応答が始まると、質問は「サード」の吉田知那美に集中した。

「藤澤選手を一生のバディだと思っていると伺いました。どんな意味ですか?」

 記者が尋ねた。平昌五輪で銅メダル獲得の中核を担った藤澤五月が今回も最後に石を投げる「スキップ」のポジションを務める。吉田が答える。

「カーリング競技の中で唯一スキップだけがスイープをほとんどしない。いちばん離れた司令塔の位置につくので1対3の構図になる。孤独になりやすいポジションです。スキップがどの選手より勝敗に結び付く一投を投げなければいけないのは事実です。チーム全員でサポートする気持ちがないと最後の一投は決まらない。ゲーム中、そばにいていちばん話をするのは私です。いかにスキップの石を決めやすくするかもサードの大事な仕事だとコーチにずっと言われています。そういう意味で、私はさっちゃんをバディと言っています」

 吉田への質問がさらに続いた。スキップを生かす役目のサードが実は勝敗のカギを握る重要な存在なのだと思い知らされた。

苦汁をなめた敗北

 同じ日、都内で、元日本代表の市川美余に会った。中部電力が4年連続日本一に輝いた時のサードが市川だ。そしてチームのスキップが2歳下の藤澤だった。

「藤澤さんは、中学生のころから注目されていた『天才スキップ』です。勝負どころでのショットの精度は抜群です。私にはあの最後の一投は投げられません」

 2013年、スキップ藤澤、サード市川を擁する中部電力は、全日本選手権で3連覇を果たし、日本代表として3月の世界選手権に出場した。翌年のソチ五輪出場枠獲得のかかる大事な大会で市川、藤澤らは五輪出場枠を獲れなかった。カーリングはチームワークが重要だからチーム単位で代表を争う。そして秋、世界最終予選出場をかけた日本代表決定戦で北海道銀行に敗れ、五輪の夢を断たれた。この時、北海道銀行のメンバーのひとりだったのが、当時22歳の吉田だった。

 天才スキップ・藤澤にも苦汁をなめた敗北があった。

 市川が振り返る。

「藤澤さんは真面目な性格なので、周りの言葉に影響を受けやすいところがありました。日本代表決定戦では、藤澤さんの緊張が伝わってきました。でも私も精一杯で、藤澤さんの緊張をほぐす雰囲気づくりができませんでした」

 悔しそうにため息をついてすぐ、こう言った。

「だから、ロコ・ソラーレのメンバーはすごい。藤澤さんの緊張を見事に和らげています。どんなに追い込まれても、声を掛け合って、笑って、藤澤さんのいいショットを引き出す……」

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