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「実在しそう」な3人の娘

 分かりやすい人物ではないので難役だが、吉田だから軽妙に演じている。吉田は2014年に演劇部門の芸術選奨文科相賞を受けているほど超一流の演劇俳優だ。

 3人の娘を演じている木南、佐久間、武田もハマり役。また、3人が演じている由香、里香、美香には不思議なリアリティーがある。品行方正ではなく、マジメでもないが、かといって平凡でもない。

 ドラマには往々にしてステレオタイプな人間性の持ち主や世間に存在しない突飛な人間が登場するものの、この3人は違う。それぞれ友人、あるいは知人として実在しそうなのだ。

 長女・由香は結婚願望が強いクセに男性の外見を重じる。それが基で5年前、源太郎の会社の取引先であるハムカツ&カンパニーの大森利夫(浜野謙太、40)を振った。

「アタシ、やっぱり外見がある程度、美しくないと。内面だけじゃ好きになれないみたい」(由香)

 半面、由香は付き合い始めたイケメン路上シンガーソングライターのリョータとも別離を決心する。

 リョータは「オレさ、高いフランス料理は食べさせられないけど、うまいラーメンなら食べさせられる」と由香を食事に誘った。

 このクサい言葉を耳にした時点で別れを考え始めたほうがいい気がするが、由香は違った。食べさせられたラーメンがまずかったから嫌気が差した。

「まずいラーメンは嫌。あれをうまいと言う男は嫌」(由香)

 由香が男性を選ぶ物差しが分からない。だから余計にリアル。人間はみんな分かりにくい。

 大阪の自宅で里香は愕然とした。大輔が自分の不在時に不倫相手を自宅に招き入れたからだ。体重計に自分とは違う身長と年齢がインプットされていた。「25歳×158センチ」。こりゃ、もうダメだろう。

 里香は大輔のわがままにも振りまわされた。大輔がタンメンを食べたがっていたので、つくって出すと、望んだものとは違ったらしく、「タンメン、タンメン!」とわめかれた。

 その理由が第6話で分かる。大輔は町の中華屋でタンメンを頼み、やはり「これじゃない」と騒ぎ、恥をかく。大輔はタンメンとワンタンメンを間違えていたのだ。やっぱり、もう大輔とは修復不能だろう。

 美香は漫画家を目指していたユウジと別れてエリートの学と付き合い始めた。由香と違い、夢だけの男性は認めない。

 ユウジと別れる前、彼の全てが注ぎ込まれたという漫画を読んだ。それを見て決断した。

「どうか私と別れてください」(美香)

 酷い代物だったらしい。

 もっとも、学にも問題点がある。いちいち支配的。美香が婚約指輪を外しているだけで不機嫌になる。おまけに上から目線で、「こんないい条件の人(自分)いないよね」(学)とのたまう。こちらもダメかも知れない。

 事件は起こらないし、重い病気に冒されている人も登場しないが、画面に釘付けになる。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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