「おいハンサム!!」人気の理由を読み解く 「闇金ウシジマくん」との共通点も
複線で進んでいく物語
家族だから同一の空間、時間に存在する場面も珍しくないが、基本的にはバラバラ。4人ともいい大人だから別行動は不思議ではない。
これが山口氏の演出と脚本の妙。物語が「複線」で進んでいくから、観る側を片時も退屈させない。
2010年から2016年まで3シーズンにわたって連ドラ化され、山口氏がメーン監督と同脚本を担当した「闇金ウシジマくん」(主演・山田孝之)もそうだった。
シーズン1では借金苦に陥って親友を騙すサラリーマンのエピソードのほか、背伸びした生活を送って借金地獄に陥ったOL、子供の治療費をつくるために風俗店で働く女性などの物語が、並行して映し出された。
通常のドラマなら、それぞれのエピソードは独立した形で別々に描かれる。1話完結なら順番に放送する。
ところが山口氏はそうしない。「相棒」(テレビ朝日)になぞらえると、杉下右京(水谷豊)が3つも4つも事件を同時に追うようなもの。それでいて山口氏の作品は観る側を混乱させないし、違和感もおぼえさせない。
人気の理由の2番目と3番目は登場人物のキャラクターづくりのうまさとその役柄に合わせた絶好のキャスティングだろう。
まず源太郎は面倒くさい男である。会社では団体行動が好きで、家でも家族会議をよく開く。
第1話で3女の美香が当時の彼氏で漫画家志望のユウジ(須藤蓮、25)と露出度の高い夏服姿で歩いているのを見掛けると、急に吠えた。
「こんな時間にそんな格好で男と歩いているのは世界中でおまえだけだ~」(源太郎)
人目なんて気にしないのだ。こう書くと、単に迷惑オヤジで、ややもすると視聴者からも敬遠されそうだが、そうならない。チャーミングなのである。
定年退職した先輩(金田明夫、67)が残した資料の有効活用を図ろうと努めたり、2女の里香が夫の大輔の浮気に傷心し、大阪から東京の伊藤家に戻ってくると、ゴルフクラブの8番アイアンを手に大阪に乗り込もうとしたり。
大輔は第6話で伊藤家に来る。謝罪のはずだった。ところが、よりによって里香の名前を不倫相手と間違える。
源太郎は憤然。そりゃそうだ。アイアンではなく、ドライバーを妻の千鶴(MEGUMI、40)に出させて、それを手に大輔を追い回す。家族愛が強いのである。家族もまた実は源太郎を敬愛している。
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