あさま山荘事件50年 テレビ中継は合計視聴率90%! 元日テレアナウンサーが振り返る“極寒の現場”
テレビ報道の問題点
「テレビでも新聞やラジオとは違った、独自の報道が行えるのだと、テレビ局の人間も含め皆が気づいた、まさにターニングポイントでした。現場で今、何が起きているのかを伝えるのは、テレビが最も得意だということが証明されたのです」
テレビでも独自のニュース報道が可能だという変化を感じ取った久能氏は、「事件について何も知らないまま中継を担当した」ことの後悔から、記者への異動を会社に願い出る。
それが認められて記者に転身し、昭和天皇の崩御報道などで活躍した。それからもテレビは、戦争や災害の報道で、現場の状況をリアルタイムに中継した。湾岸戦争、アメリカ同時多発テロ、そして東日本大震災……。
だが、テレビ報道の長所と短所は、あさま山荘の時と今も変わっていないという。
「テレビは現場のリアルな状況を伝える能力は圧倒的に高い。ところが、湾岸戦争にしても同時多発テロにしても、戦争が起きた背景や原因を解説するという点は、やはり得意ではありません。あさま山荘の生中継でも、『結局は警察の宣伝に使われただけではないか』という批判がありましたが、湾岸戦争や同時多発テロでもテレビはアメリカのプロパガンダに利用された側面があります。私たちが抱えているテレビ報道の問題点は、実はあさま山荘の時に浮かび上がった問題点と全く変わっていないのです」
[4/4ページ]