悠仁さまが合格された「筑波大学附属高」の実相 減った東大合格者数と負のスパイラル
減り続けた東大合格者
ならば筑附の東大合格者の多くが浪人生なのかと言えば、それも違う。インターエデュの調べでは、合格者29人のうち現役生は22人。浪人生は7人に過ぎない。
筑附の内情に詳しい関係者は、「筑附が本当の意味でエリート校だったのは70年代までです」と指摘する。
「筑附のモットーは『自主、自律、自由』です。それが素晴らしいことは間違いありません。また、知的レベルが高い良質で教養主義的な授業が行われているのも事実です。ところが、ライバル校の中には東大合格者を増やすことを最優先とし、徹底的な詰め込み教育を行うところも珍しくありません。そうした学校に、筑附は太刀打ちできなくなっているのです」
この証言を裏付けるデータがある。大学合格者の調査で知られる「大学通信」がまとめた「1970〜2021年 過去52年の東大合格者ランキングベスト10」だ。
「例えば1970年を見ると、当時、教育大附属と呼ばれていた筑附は103人の東大合格者を輩出し、ランキング3位でした。1978年までは、ほとんどの年でベスト5に入っています。ところが1979年に共通一次試験がスタートすると、筑附はベスト5に入れなくなってしまうのです。そして1989年の7位を最後に、ベスト10からも姿を消しました」(前出の記者)
自由な校風が仇
前出の関係者は、「筑附は“負のスパイラル”に入ってしまった、これに尽きます」と言う。
「かつては優秀な生徒ばかりでしたから、学校側が放任主義でも、彼らは勝手に勉強して東大に合格していました。ところが東大合格者が減って他校に優秀な生徒を取られてしまうと、自由な校風が仇になり、勉強しない生徒が増えてしまったのです。そうすると東大合格者ランキングは更に下がり、優秀な生徒も更に筑附に来なくなるという悪循環に陥ってしまったのです」
もちろん全国の高校のうち、東大合格者を輩出する学校などほんの一握りだろう。そもそも東大合格者ランキング自体が、高校が持つ様々な実力を測る一つの尺度に過ぎない。
とはいえ、東大合格者ランキングで志望校を選ぶ保護者や生徒が存在するのも、また紛れもない事実である。筑附は高校の偏差値が最高ランクなのは先に見た通りだが、中学はトップではない。
渋谷教育学園幕張中学校(千葉市・私立・共学)といった学校の後塵を拝しているのが実情だ。ここからも“負のスパイラル”が浮き彫りになる。
「筑附自体の問題もあります。そもそも東大合格者数を積極的に増やすべきか、という地点から議論を始めなければなりません。国立の高校が東大合格者を血眼になって増やす必要はない、という考えもあります。自由な校風に憧れる保護者や生徒も依然として少なくないでしょうが、現実的には受験対策で手厚いサポートを行ってくれる私立高のほうが安心だという声もあります。このままでは筑附の“地盤沈下”は更に進んでもおかしくないのです」(同・関係者)
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