みずほ銀行「新頭取」決定のウラ システム障害に続く新たな“爆弾”とは
「明らかに首相官邸、金融庁、政治対策」
特に木原氏をめぐっては、「興銀の流れをくむ投資銀行部門、海外部門の経験が豊富だ。落ち着いた人柄で危機に陥ったみずほの改革をリードするはず」(メガバンク幹部)といった期待も大きい。その一方、岸田政権の政策の柱を務める木原誠二官房副長官を弟に持つだけに木原氏の起用について銀行関係者の間では、「官邸との距離感の近さで金融庁にプレッシャーをかけるため」と、実力とは関係ない理由で抜擢されたという意見も根強い。他のメガバンクの幹部は、
「明らかに首相官邸、金融庁、政治対策でしょうね。はっきり言って、今の金融庁の幹部で永田町、首相官邸と上手にコミュニケーションできる人はあまりいません。みずほの経営幹部たちは、木原社長を起用し、金融庁の口出しをけん制しようとしたに違いありません」
と話すが、さすがにそのために木原氏を起用したのであれば、みずほの見識が疑われる。だが嘘か誠か、「実際、金融庁幹部も『官房副長官の実兄を社長に起用されるとやりにくい』と漏らしていた」(大手新聞デスク)という。
ともかくみずほにとって、新体制で「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」を変え、システム障害に歯止めをかけられるかどうかが、同行の未来を左右する。さらにトラブルが続けば、個人の利用者も企業の取引先も株主も離れていき、メガバンクからの脱落も現実味を帯びてくるだろう。
「永田町から矛先を向けられるのは確実」
前出の大手新聞デスクは、「実は金融庁側もみずほとは違った焦りを覚えているはずです」と語る。ATMでのシステム障害は顧客に大きな不便が生じるため、「昨年11月の業務改善命令で歯止めを掛けられなければ、永田町から『金融庁は何をやっているんだ』と矛先を向けられるのは確実」(大手新聞デスク)だというのだ。
先のメガバンクの幹部は、「金融庁は実は、佐藤FG会長の後任として別の民間企業の経営経験者を起用する案も温めていたんです」と言う。
「2003年に実質国有化された『りそなホールディングス』の会長に、当時JR東日本の副会長だった細谷英二氏が起用されたことで、金融の外からの発想で大胆な改革を進めることができました。しかし、FGの坂井社長が年末に心身の疲労で体調を崩したので、木原氏の前倒し起用などが不可避となってしまった。結果的に、みずほFGの会長と社長、みずほ銀の頭取への大胆な外部人材の招聘などが見送られ、興銀、第一勧銀、富士銀の3行から起用されることになったんです」
しかし現時点で多くの銀行関係者の予測通り障害の連鎖は止まっていない。
木原氏のFG社長就任以降も、みずほ銀行では2月11日にネットワークが不安定になり、ATMが1台しかない9拠点が利用不可能となった。一時的に約90拠点のATMを停止してメンテナンスすることになり、顧客への影響はさらに拡大した。昨年2月以降では11回目となるシステム障害に、金融庁は状況説明などを求めたが、「次を防げる保証はないでしょうね。まさに正念場です」(他のメガバンク幹部)。
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