北海道で立ち往生した鉄道の雪対策とは? 首都圏で起こったらどうなるか?
ディーゼルエンジンが不調を来して
北海道にお住まいの方には何をいまさらと言われるかもしれないが、地吹雪で恐ろしいのは雪が降っていなくても地上に雪が積もってさえいれば起きるという点だ。翌2月7日は時間帯によっては快晴と言ってもよいほどの天候となった。しかし、晴れていた午前11時に北北西の風4.0m、気温氷点下9.9度を記録していたので、地吹雪に見舞われていたに違いない。
先ほどのJR北海道の告知を見ると、函館線の厚別駅や苗穂(なえぼ)駅、千歳線の北広島駅で吹き溜まりによって埋もれてしまった列車の写真が掲載されている。列車を取り巻く積雪を見ると、厚別駅や苗穂駅ではレールから列車の床面までの高さとほぼ同じ約120cm、北広島駅で除雪作業を行っている人の身長から見て150cmほどのようだ。
除雪作業に付きものの除雪車と言うと、普通は雪を押して線路の両側または片側へとかき分けるラッセル式雪かき車が一般的だが、これほどの積雪では用を成さない。ロータリー式雪かき車といって、前方の雪を左右方向に開いた板で集めてから羽根車で雪を線路の外に投げ飛ばす除雪車でないと無理だ。
しかも、ロータリー式除雪車が雪を取り除きながら進む速度は時速5km程度なので、線路上から雪が姿を消すまでには相当な時間を要する。除雪に時間がかかるだけならばまだよい。1mを超える吹き溜まりとなると、ロータリー式除雪車でも難儀し、JR北海道によると動力用のディーゼルエンジンが不調を来してしまうこともあったという。
除雪作業だけでは限界がある
吹き溜まりを生み出す地吹雪から鉄道を守るには、除雪作業だけでは限界がある。そこで、線路脇に防雪柵を立てて雪が線路に進入しないような取り組みが行われてきた。防雪柵は、効果はあるけれども、強風で倒壊することがある。付け加えると、設置場所は田畑や原野とすべて他人の土地であってJR北海道の所有ではないので、都市化が進んで宅地となったりすると防雪柵を置く場所が失われてしまう。
もう一つ効果的なものとして挙げられるのは、一般には防雪林と呼ばれる吹雪防止林だ。地吹雪によって飛ばされた雪を受け止めて木々の間やその周辺に強制的に落とし、雪が線路まで届くのを防ぐ役割を果たす。現在は青い森鉄道の青い森鉄道線である青森県の野辺地(のへじ)駅で1893(明治26)年から築かれた野辺地防雪原林が国内最初のものである。
ここでは1.7ヘクタールの敷地に杉が2万1190本、カラマツが1000本、合わせて2万2190本が植えられた。ちなみに、吹雪防止林は1ヘクタール当たり3000本から5000本程度で効果を発揮するそうで、野辺地防雪原林は通常の吹雪防止林に比べて3倍近い樹木が植えられていることとなる。おかげで野辺地駅を挟んだ乙供(おっとも)駅と小湊駅との間の30.2kmに15カ所、延長5.3kmにわたって設置されていた防雪柵はすべて不要となって撤去されたという。
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