“元楽天ドラ1”片山博視、34歳でトライアウト再挑戦…本人が語る独立リーグで生き生きと野球を続ける理由

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「投げることより打つ方がずっと好き」

 野手として結果を残せたという話だが、その“結果”というのも並大抵のレベルではない。昨年は、兼任コーチながら60試合に出場すると、打率.361、7本塁打、35打点をマークし、東地区の首位打者に輝くとともに、リーグ全体のベストナイン(一塁手部門)を受賞した。元NPBの選手とはいえ、野手としては15年に二軍で49試合に出場しただけであることを考えると、この成績がいかに凄いものかがよく分かる。

 残念ながら、NPBの球団からオファーは届かなかったものの、合同トライアウトでは、他球団への移籍を勝ち取った古川侑利(巨人→日本ハム育成)の147キロのストレートを弾き返してレフト前に運ぶ見事なバッティングを見せている。

 高卒で投手としてドラフト1位で入団し、野手として再起した背景にはかなりの努力があったことが想像されるが、そのことについて話を振ると、意外な答えが返ってきた。

「高校時代はプロに行くなら野手だと思っていました。だから、3年夏の地方大会が終わってからピッチング練習はせず、ずっと野手の練習をしていましたね。ドラフトで名前を呼ばれた時に『投手』って言われたので、ちょっとびっくりしたくらいです。個人的にも投げることより打つ方がずっと好きです。プロに入ってからも、マシンでバッティング練習とかしていました。それが今に生かされているかもしれませんね(笑)」

「独立リーグに来たことはプラスしかない」

 そうは言っても、ドラフト1位でプロ入りし、一軍で結果を残した選手が、環境面や待遇面で大きく劣る独立リーグでプレーすることに対しての葛藤はなかったのだろうか。

「それは全くないですね。野球選手として自分の価値を買ってくれるところでプレーできていることは本当にありがたいですし、コーチという立場もやらせてもらっている。独立リーグに来たことはプラスしかありません。最初は1年でNPBに戻るという気持ちでしたけど、肘の状態が思った以上に良くなかったので、すぐにチームのために、自分ができることを考えるようになりました」

 年齢的なことや実績を考えればコーチ専任という選択肢も当然考えられるが、選手としてプレーし続けていることのプラスもあるという。

「コーチだけだと、どうしても結果論で話してしまうことが増えると思うんですよね。選手として、一緒にプレーすることでより近い立場で話ができるというメリットはあると思います。同じ投手と対戦して、ある選手は凡打だったけど自分はヒットを打ったというケースがあれば、その理由を一緒に共有できますし、説得力も増しますよね。

 あと他のチームですけど、川崎宗則さん(元ソフトバンクなど、現・栃木ゴールデンブレーブス)ほどの実績のある方も本当に一生懸命プレーしていますし、自分より上の年齢でまだ現役としてプレーしている独立の選手もいます。そういう姿を見たら自分なんかもっとやらないといけないという気持ちになりますね」

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