“元楽天ドラ1”片山博視、34歳でトライアウト再挑戦…本人が語る独立リーグで生き生きと野球を続ける理由

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 どんな環境でも挑戦し続けることが、いかに人生にとって大切なのか、身をもって教えてくれる、ひとりのプロ野球選手がいる――。

 昨年12月8日に行われたプロ野球12球団合同トライアウト。投手22人、野手11人の合計33人が参加したが、その中でも異色の存在感を放っていたのが、元楽天のドラフト1位で、34歳の片山博視(埼玉武蔵ヒートベアーズ)だ。その異色ぶりを伝えるには、これまでの片山の経歴を説明する必要があるだろう。【西尾典文/野球ライター】

2年連続で50試合以上

 片山は報徳学園時代、甲子園に出場するなどプロ注目の選手で、2005年の高校生ドラフト1位で楽天に入団した。3年目にプロ初勝利をマークすると、中継ぎに転向した10年からは2年連続で50試合以上に登板を果たしている。

 しかし、その後は故障に苦しみ15年シーズン途中で野手に転向。さらに翌年には投手に再転向したものの、怪我の影響もあって17年限りで自由契約となっている。これだけであれば、それほど珍しい経歴ではないが、片山の“異色たる所以”は楽天退団後にある。

 自由契約となった17年オフに合同トライアウトに参加したが、NPB球団からのオファーはなくBCリーグの武蔵ヒートベアーズ(現・埼玉武蔵ヒートベアーズ)に投手兼コーチとして入団する。

 翌年は、BCリーグで導入されているオーバーエイジ枠(27歳以上の選手は1球団5人まで。20年からは6人までとなり、21年は適用せず)の影響で一時コーチ専任となったものの、シーズン途中から野手として現役に復帰した。

 冒頭で触れた、2度目となる昨年のトライアウトは、“投手ではなく野手”として参加したのだ。34歳という年齢で、4年ぶりに参加することですら異例だが、投手から野手に転向して参加というのも過去に例のないことである。

「えっ! お前が受けるの?」

 この決断に至った経緯について、片山本人に直接、話を聞いてみた。

「3年前のシーズン途中に現役復帰して、一昨年はコロナもあってシーズンも短かったんですけど、昨年はやっと1年間プレーして野手として結果が残せました。これだけできたのなら、トライアウトを受ける権利もあるだろうと思って決めました。仮に育成選手だとしても、オファーがあれば当然NPBに復帰するつもりでした。

 立場としては、コーチ兼任なので、NPBのスカウトの方とお話しする機会も多いのですが、自分がトライアウト受けますという話をしたら『えっ! お前が受けるの?』とは言われましたね。他にも、これだけのブランクがあって、『この年になって受ける意味あるのか』という声があったのも事実です。

 ただ、NPB入りを目指している独立リーグの選手に、自分がチャレンジしている姿を見せるということも意味があるのかな、という思いはありました」

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