単身赴任の妻が誕生日に若い男と浮気… 「47歳」夫はなぜ“彼女の釈明”に怒りが沸かなかったのか

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妻を許したわけではない

 3年たって、佳緖さんは単身赴任を終えて自宅に戻ってきた。それからすでに3年近くがたつ。

「佳緖はまったくいつも通りです。単身赴任でかなり成果を上げたらしく、今は若くして営業部次長です。佳緖が帰ってきて2ヶ月ほどたったころ、部下を数名連れてきたことがあるんですよ。佳緖は会社でも、きっちり『チーム』を組んでいるようで、同僚も先輩も後輩もみんなが佳緖を慕っていることがよくわかった。佳緖は僕たちのことも『私のプライベートチーム』と紹介していました。子どもたちも佳緖の会社の人たちとすっかり仲良くなって……。佳緖という人間のすごさを見たような気がしました」

 とはいえ、あの出来事を思い出すこともあると光憲さんは言う。苦しいと思うこともあった。それが嫉妬なのか、一般的な価値観に見合わせた上で倫理観から来る苦悩なのか、彼自身も判断できていない。お腹がすいたときにご飯を出されたら人は食べてしまう。それと同じことだったと思うしかないのだという。

「佳緖が九州へ出張に出ることはたまにあるけど、あの男とどうなったかなんて聞いたことがない。こういうことを言うと、僕が器の大きな人間で、浮気した妻を許したということになりがちですけど、それは全然違うんです。たぶん、佳緖も僕も“普通の家族”で育っていないので、どこか枠から外れているんじゃないでしょうか。特に佳緖は浮気を否定したら、自分は産まれていなかったという思いもあるのかもしれない。まあ、佳緖がそういうふうに考える人かと言われるとそうとは思えないけど、意識下でどうとらえているかはわかりませんから」

 この数年間、光憲さんはいろいろ考えたのだろう。こうも言った。

「浮気が問題なのは、夫婦は他の人と関係をもってはいけないという決まりがあるからですよね。でも僕自身はそこを問題視することができなかった。お腹がすいているときに出されたご飯を食べた人を責められない。ずっとそう思っていました。ただ、武士は食わねど高楊枝ということわざもある。その狭間で僕は苦しいのかもしれない」

 コロナ禍でふたりの働き方は少し変わったが、チームの団結が崩れることはなかった。娘は現在、大学受験の真っ最中だ。

「僕と佳緖の関係も、特に変化はないですね。コロナ禍で仕事が若干、停滞したりうまくいかないことがあるんでしょうけど、佳緖はいつも機嫌がいい。そういえば、僕は佳緖が不機嫌になっているのを見たことがないんですよね。これは彼女の特筆すべき才能かもしれないと最近思うようになりました。あのときのことを蒸し返すことはありません。なかったことにしているわけではないんだけど、俎上にのせても処理方法がわからないので(笑)」

 気の迷いでもなく、魔物に魅入られて恋に落ちたわけでもない「不倫」。長く生きていれば、そんなこともある。佳緖さんを深く愛しているから光憲さんは嫉妬しないのか、嫉妬に値する関係ではないと思っているのか、あるいは嫉妬の感情をもたないのか。そのあたりは本人でさえわからないと言う。ただ、光憲さんと佳緖さんのタッグは今も固く結ばれている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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