支持率低下を恐れて「コロナ鎖国政策」をやめられない岸田総理 「子供へマスク推奨」は非現実的?

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世界一厳しい水際対策

 ところが、岸田総理が耳を傾けるのは、データがない人たちの声だから、不思議である。その一例を、政治部記者が解説する。

「オミクロン株が南アフリカではやりはじめた、と伝えられた昨年11月末、岸田総理は全世界からの外国人の新規入国を、原則禁止にしました。世界一厳しいこの水際対策は、翌月の読売新聞の世論調査で89%に支持され、それが総理の成功体験になっています。欧米各国は、すでにワクチン接種証明や陰性証明があれば往来可能で、東南アジアも緩和の方向です。そもそも1月半ばには、WHO(世界保健機関)が、オミクロン株は渡航制限では感染拡大を防げないから、各国に水際対策の緩和を求めています。ところが岸田総理は、そういう声を少しも聞かず、2月末まで対策を維持すると言っている。経済界や留学生関係者の悲鳴にも、全然耳を傾けません」

 それは、なぜなのか。

「入国制限を緩和したタイミングで感染者が増えたら、政権批判につながりかねない。そうなれば夏の参院選にも影響しますから」

 世論調査で総理の水際対策を支持した人たちの多くは、その是非を科学的に検証してはいないだろう。だが、岸田総理は、そういう人たちには「聞く力」を示し、科学的知見に基づいた提言は聞かない。

 その結果、社会の活力が失なわれ、未来が損なわれても目をつぶり、目先の支持率を優先するなら、亡国の宰相と呼ぶほかあるまい。

「国力も低下する」

 医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授は、

「水際対策は、ウイルスの国内への流入を遅らせ、その間に医療などの体制を整えるためのもの。初動の水際対策によって、オミクロン株の特徴がある程度わかるまで、まん延時期が先に延びた点は評価できます」

 と言うが、こう続ける。

「その間に国内対策を充実させられたかどうか疑問です。また、市中感染が拡大して以降は水際対策に意味がなく、いまも続けている理由がわかりません。国内での感染対策が微妙なので、政府は国民の目を国外に向けさせているのか、と勘繰ってしまいます」

 浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師も指摘する。

「いまの日本の水際対策に意味があるとすれば、日本ほどオミクロン株がはやっていない国から外国人を入国させず、結果的に彼らを感染から守っている、という程度。国内向けには、それくらい意味がない」

 また、国際政治学者の三浦瑠麗さんは、

「移動の自由とは、人間にとって根本的な自由の問題。日本がそれを制限する以上、各国が対抗措置として、日本人の入国条件を厳しくすることも考えられます。入国が厳しいとされる中国ですら、4週間の隔離で入国できるのです。このままの水際対策を続けると、日本は世界的に孤立し、留学生をはじめ日本に理解がある外国人が減り、結果的に国力も低下するでしょう」

 と、危惧するのである。

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