藤井聡太が早くも五冠達成 渡辺明三冠を苦しめた“チェンジアップ”とは

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 5局目は佐賀県三養基郡上峰町の「大幸園」での予定だった。渡辺のまさかの「ストレート負け」で、佐賀県の将棋ファンには残念な結果になった。実は佐賀県は昨年8月に開催予定だった王位戦第4局で嬉野市の和多屋別荘が舞台になるはずだったが、集中豪雨で危険になり急遽、会場が大阪の関西将棋会館に移された。日本将棋連盟の常盤秀樹メディア部長は「佐賀県のファンは残念だったと思いますが、またチャンスがあると思いますのでぜひよろしくお願いします」と気遣っていた。

 勝者は様々なポーズでの撮影はもちろん、揮毫したりもする。その他、対局中の食事のことを聞かれたり、ご当地サービスも多い。特に王将戦では一局ごとに勝者はご当地ゆかりの様々な滑稽な格好などをする「コスプレ」披露も伝統だ。筆者は会見で「ファンサービスやご当地サービスなどが多く、しんどいと思うことはないですか?」と訊いた。藤井は「勝者の記念撮影ということで(思い出したのかちょっとくすっと笑って)ふだんやらない経験ができ……うーん、まあ楽しくやることができました」と語ってくれた。うーん、どこまでも隙が無い優等生である。

 藤井の今季の最後の戦いは3月9日に、A級昇級を賭けた名人戦順位戦B1組の最終戦だ。昇級争いで一歩リードしている。相手の佐々木勇気七段(27)はA級昇級争いからは脱落したが、かつて藤井のデビュー以来の連勝記録を29で止めた棋士。順位戦では二期連続昇級してきた勢いもあり油断はできない。それを問われた藤井は「まだ日があるのでしっかり準備していきたい」。新聞社の将棋担当記者や将棋ライターでもない筆者が藤井の五冠すべてに立ち会えた。「僥倖としかいいようがない」(藤井聡太17歳の言葉)である。(敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

デイリー新潮編集部

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