カムカムでひなたを演じる川栄李奈 AKB48で最も成功した女優の強みとは

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最大の魅力は“無個性”

 彼女の最大の魅力は、大勢の中では埋まってしまいがちな“無個性”を演じられることだろう。例えば映画初主演作となった18年10月公開の「恋のしずく」で演じたのはワインソムリエを目指す大学生・橘詩織役だった。詩織は間違って伝統ある酒造へ実習に行ってしまうのだが、それをきっかけに日本酒造りの奥深さに目覚めていく。恋とお酒のマッチングラブストーリーだったが、本作での彼女は演技を演技と感じさせない、すごさがあった。メガホンを取った瀬木直貴監督も「役に向かう集中力、爆発力はさすが。多くの監督やプロデューサーから請われる理由がわかります」と等身大の演技を絶賛したほどだった。

 19年6月公開の映画「泣くな赤鬼」では幼子を抱え、末期がんで自暴自棄になる夫を明るく支える斎藤雪乃役を好演。彼女のキャリアのなかでも難役だったが、堤真一や柳楽優弥ら周囲の実力派俳優陣に埋没することなく、際立つ存在感を放っていた。

 演じ方や役作りについて川栄は「自分の中のこの子だというイメージで、憑依しています」と語っている。同様に「泣くな赤鬼」の兼重敦監督も「理屈ではなくて生理的に受け止めて役が憑依してしまう。天才と言っていい役者さんだと思います」と誉めている点は見逃せない。

「調子に乗ったら私なんかすぐに消える」

 今やドラマに限らずCMなどにも引っ張りだこになっているが、それは川栄の女優としての資質はもちろん、仕事に対する向き合い方も大きいと思われる。どんなに演技が評価されてもいつも危機感を持っており、「調子に乗ったら私なんかすぐに消える」が口グセだ。仕事が立て込み、映画とドラマを掛け持ちして、舞台稽古も同時にあって……というスケジュールでも弱音を吐かなかったという。たとえ1シーンだけの映画でも、際立つ役や存在感がある役なら引き受けることもあるという。

 6度目のオーディションでついに射止めた今回の朝ドラヒロイン。その初登場シーンはユニークな“寝起き”の設定だった。だが、これが「ああ、ひなたっぽい。これがひなただよね」と視聴者を納得させてしまった。彼女には完全にひなたが“憑依”していて、すでにキャラクターをつかんでいる。川栄李奈は最終回まで大月ひなたとして“ひなたの道”を歩んでいく。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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