コロナ、薬物、後遺症… 米国「生産人口年齢」の劣化が招く世界規模のインフレ

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過剰摂取による死者数が過去最多

 薬物の使用から死に至るケースも後を絶たない。

 米CDCは昨年11月「米国の薬物過剰摂取による死者数が2021年4月までの1年間に10万人を超え(前年比29%増)、過去最多を更新した」ことを明らかにした。モルヒネに比べて100倍の強さと言われる合成オピオイド系のフェンタニルなどが出回っていることが死者数が急増している要因だ。

 年代別で見てみると死者が20代から50代の働き盛りの世代に集中していることがわかる。昨年12月に公表された民間調査によれば、18~45歳の死因の第1位が「薬物の過剰摂取」になった。薬物中毒死はこれまで白人の問題と言われてきたが、パンデミックの下で黒人の薬物中毒死も急増している。

 死に至らなかったとしても薬物中毒で働けなくなってしまった人は桁違いの多さで存在していることは間違いない。米国で恒常的な人手不足が起きている真の原因は、生産年齢人口が急速に劣化していることにあると言っても過言ではない。

 足元の世界経済はインフレがリスク要因となっているが、「その背景には世界全体で起きている生産年齢人口の減少がある」と筆者は考えている。日本の生産年齢人口は1996年、欧州は2011年、中国は2016年から減少に転じた。米国の生産年齢人口はかろうじてプラスを保っているものの、パンデミックの影響で実質的にはマイナスになってしまった可能性が高い。

 世界は今後長期にわたってインフレに苦しむことになるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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