コロナ、薬物、後遺症… 米国「生産人口年齢」の劣化が招く世界規模のインフレ

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後遺症が経済に与える悪影響

 パンデミックを機に労働者の意識改革が進んでいることはプラスの動きかもしれないが、米国の労働市場に起きているマイナスの現象も見逃してはならない。

 新型コロナ感染者数についても米国は世界第1位だ。7600万人を超え、全国民の2割以上が罹患しており、日本と同様、その後遺症が問題となりつつある。新型コロナの後遺症に関する効果的な治療法は確立されておらず、症状が数週間、場合によっては数年間続くことがあると言われている。

 米国疾病予防管理センター(CDC)は「米国の生産年齢人口(15~64歳人口)の7人に1人が新型コロナの後遺症を経験、または経験している可能性がある」としている。

 新型コロナの後遺症が経済に与える悪影響は無視できないレベルに達していることから、ブルッキングス研究所は今年1月中旬、新型コロナの後遺症の経済的影響に関する調査結果を公表した。それによれば、米国では新型コロナ感染症の後遺症で約160万人の生産年齢人口が失われ、さらに500万人が完全に働けなくなったわけではないものの、労働時間が減った可能性があるという。

 自発的な離職に注目が集まっているが、新型コロナの感染者が増えるたびに後遺症に苦しむ労働者が増加するという事態も進行しているのだ。

 気になるのは後遺症を訴える人の65%が「長期化する症状のせいでストレスや不安が増している」と回答していることだ。「自身の症状について誰にも話せない」と感じている人は少なくないことから、「新型コロナの後遺症に苦しむ人々はストレスや不安を一時的に軽減させるために薬物に手を出している可能性が高いのではないか」との疑念が頭をよぎる。

 熾烈な競争社会である米国では以前から薬物使用が問題となっていたが、コロナ禍がこの動きを加速したからだ。パンデミック下でこれまで以上に多くの米国人が精神的な苦痛や経済的な困窮、社会的孤立感などが引き起こす「うつ」的な感情を紛らわすために薬物に手を出した。これまで薬物に縁遠かった多くの人も薬物中毒になったと言われている。

 日本の国民皆保険制度のような仕組みが米国に存在しないことも薬物の使用を後押ししている。新型コロナウイルスに感染しても高額な医療費を払えない人々は炎症を抑えるために鎮静効果がある薬物の力を借りるしか手がなかったのが米国の実情だ。

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