【カムカム】「ひなた」のいる回転焼き屋にやってきた“不愛想な男”から目が離せない理由

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 3世代3人のヒロインが物語を紡いでいるNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の中心人物が、アンカー・ひなた(川栄李奈、26)に移った。朝ドラで初めてヒロインを3世代3人にした理由が浮き彫りになりつつある。全体に横たわるテーマも見えてきた。

ヒロインそれぞれに試練

 安子(上白石萌音、24)、るい(深津絵里、49)、ひなたは三人三様の試練に直面した。それには時代が表れていた。

 安子の苦難は「戦争」、戦争の影を背負わされた世代のるいは「安子との別離」と「額の傷」、ひなたは「進路」である。
 ひなたの問題は小さいようだが、友人たちが将来に向かって着実に歩み始めていることもあり、本人には切実に違いない。1965年生まれらしい悩みと言える。若いので今後も困難にぶつかるだろう。

 安子とるいは試練を自分の力で克服しようとした。安子は夫・雉真稔(松村北斗、26)が戦死すると、裕福な雉真家に頼らず、歯を食いしばって、るいを育てていこうとした。大阪での母娘暮らしは貧しかったものの、幸せだった。

 るいは雉真家に額の手術を勧められながら、それを固辞。援助も断って自立した。今は豊かではないが、幸せだ。

 この物語のキーワードが「ひなたの道」なのはご存じの通り。ジャズの名曲「On the Sunny Side of the Street」のタイトルを和訳したものである。

 この曲は安子、るいの生き方の座標軸だった。歌詞のサビは「Life can be so sweet」(人生は幸せなものにできる)である。

 どんな時代や環境であろうが、人生は自分の力や考え方で幸せにすることができるということ。ひなたも無意識のうち、同じ生き方をしようとしている。

 ひなたは勉強が苦手なので、1983年だった高3時に進路選択を迫られると、「お母ちゃん、こんなんで私これから、どないして生きていこう」(第73話)と半泣きになった。けれどミス条映コンテストに光を見出す。

 コンテストには落ちたものの、条映映画の時代劇の撮影現場で働き始めた。安子、るいと同じく、誰にも頼らず、自らの居場所を見つけた。

 この3人の生き方こそ脚本を書いている藤本有紀さん(54)からの大きなメッセージに違いない。生きる時代や環境は選べないものの、自分次第で幸せは掴める。

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